36人が本棚に入れています
本棚に追加
各自に一枚ずつ、それを配っていく。
そして全員に配り終えたのを確認すると、蔡未はあらためて宣言した。
「私達で新しい部を作ります。学生の本分は勉強ーーしかし、部活に精を出すのも、学生としての本来あるべき姿です」
「ようするに、習い事がある日を、部活動で上書きするって事か?」
「完全に無い事にはできませんが、時間を遅らせることはできるはずです。なにせ部活動ですからね。学校が終わってそのまま活動するのですから、必然的に習い事はその後になりますし」
蔡未の提案は、まさしくとんでもないものだった。
いくら約束したとはいえ、その舞台を整えるために部活を作ろうとするなんて。まだ転校してきて初日なのに、その図々しさはあっぱれとしか言い様がない。
「その分、お嬢様には負担をかけることになりますが、どうでしょう?」
「うむ、わたしはかまわないぞ」
一千夏が平然と答える。
ゲームを教わるという本来の目的が果たされるとはいえ、習い事自体がなくなるわけじゃない。結果として、忙しさが上乗せされるだけだ。
やはり、お嬢様の考えてる事はよくわからない。
「では早速、申請してきますので、お二人はこのまま昼食の時間をお過ごしてください。一応、片付けのためにあとで戻っては来ますが」
そう言い残し、蔡未が屋上を後にする。
あとに残ったのは、宗太と一千夏の二人。そしてピクニックにでも来たかのような、豪勢なおかずが勢ぞろいする重箱だけだった。
「……今更だけどさ、この料理めちゃくちゃうまいな」
「蔡未の料理の腕はぴか一だからな。おいしい料理を作るのに、愛想なんてものは不要というわけだ」
「それ微妙に褒め言葉とは違う気がする」
最初のコメントを投稿しよう!