36人が本棚に入れています
本棚に追加
二人は熱い握手を交わした。人が行き交う、往来のど真ん中で。
「やっぱり、宗太もああいう幼なじみが欲しいって思うのか?」
「いや、俺が好きなのは二次元の幼なじみだから。あんな小さい頃の事覚えてる奴なんて、現実にはいねーよ」
「それはそうだけど……でも、将来結婚する約束して、それが叶う展開とか本当ヤバいよな。どうぞ末永く爆発しろって感じ」
そうしたトークで盛り上がっていると、いつの間にか学校にたどり着いていた。
だが、その後すぐ、とんでもない事態が降りかかろうとは、その時の宗太自身も想像だにしていなかったーー。
▽
朝のHRの時に事件は起きた。
先生の話がひと段落した矢先、ふいに発せられた一言。
「実は今日、このクラスに転校生がやってきます」
教室内がざわつく。
高校二年のこの時期に転校生というのもそうだが、それ以上にクラスをうるさくさせている要因がある。
「転校生!? よしっ、これで灰色だった俺の青春にもチャンスが!」
「どんな子だろ。もし男の子ならイケメンがいいなぁ……南くんみたいな……」
「とりあえず面白いやつならヨシ!」
一部おかしいのもあったが、そのほとんどは期待の言葉だった。
事前に聞かされないまま、当日になって明かされたサプライズ。内容はなんであれ、学生というのはそういったものに弱い傾向がある。
ただ一人を除いて。
(昨日は共通クリアしたから、今日からは個別だな。ひとまず、最初は気になったキャラから攻めてくか)
周囲には目もくれず、宗太は昨日買ったばかりのゲームの事で頭がいっぱいだった。
そうしてる間に、転校生が教室に入ってくる。思考を巡らせていた宗太が、ふと壇上に目を向けると。
「……えっ?」
そんな声が、いつの間にか口から漏れ出ていた。
先生が黒板に名前を書き込んでいく。鳳一千夏〈おおとりいちか〉。それが壇上にいる、″見知った″彼女のフルネームだった。
最初のコメントを投稿しよう!