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ブラウスの上から重ねるようにして着衣した黒のキャミソール。 その装いは、まるで上質な生け花のようでもあって。 「……これだとまるで、普通の女の子のようですね」 自分の格好をまじまじと眺めながら、蔡未がふとそんな感想をこぼす。 「わたしとしては、もう少し攻めた感じでいきたかったのだがな。まぁでも、デートなのだからそれくらいが丁度いいだろう」 「いえ、これは単に男子と二人っきりで出かけるだけです」 「普通、それをデートと言うのではないか?」 「……」 訂正したつもりが、自分から墓穴を掘ってしまった。 そうこうしているうちに、約束の時間まであと少し。まだ急ぐほどではないが、問題は心の準備の方。 この格好を宗太に見られる事。それすらも恥ずかしいのに、この格好のまま外を歩くのはあまりにリスクが高い。 (しかし、ここで物怖じするのはメイドとしてあるまじき事。お嬢様のために。そして、イヤじゃないと言ってくださった宗太さんのためにも、私はこの羞恥に打ち勝ってみせます) 胸元で拳を固め、静かに闘志を燃やす。 そんな蔡未を邪魔しないように、一千夏は静かに部屋を後にした。主人としてやれる事はやった。なら、あとはその行く末を見守るだけ。 ーーが、それからすぐの事。 「……? 電話……もしや宗太さんからでしょうか?」 机の上で振動する携帯を手に取り、画面を開く。 そこに表示されていたのは……自分のよく知る番号と名前だった。 しかし、その相手は宗太ではなく。むしろ、予想もできなかった相手でーー
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