第14話 思ったようにいかない。ゆえにメイドは自らの環境に苦悩する

5/42
前へ
/955ページ
次へ
「えっ、マジ? 蔡未、オレと一緒に来てくれないの?」 男は落胆すると、両手を前に出しながら、蔡未との距離をジリジリと詰めていく。 がーーそれをすんでのところでヒラリとかわし。 「ええ、私はどこにもいきません。いくら抱きつかれて愛をささやかれても、その気持ちが変わることはありません」 「……そうか。ならいいや、今は。さすがにいきなりすぎたって、オレもわかってはいたしな」 諦めたように言うと、男は宗太の方に向き直る。 そして、品定めでもするかのように、視線を上下に何度も往復させた。 「へぇ……蔡未はこういう男子が好みなのか。宗太くんだっけ? キミ、蔡未のコトどう思ってる?」 ド直球の質問。 「どうって、それは……」 「蔡未って美人だと思うんだよ。これは誰もが抱く共通認識なんじゃないかって、父親としてオレはそう思うわけだ」 「なるほど、父親として……えっ? 父親?」 一瞬、聞き間違いかと思った。 確認を取るように、蔡未の方を一瞥する。すると。 「……はい、事実です」 「うそーん……」 思わず心の声が漏れた。 まさか、蔡未の父親だったなんて。勝手に勘違いしたのはこっちだが、率直な事を言わせてもらうと、あまりにも似ていない。 それは銀髪と茶髪という違いもあるが、もしかしたら蔡未は母親の方に似ているのかもしれない……と、そんなどうでもいい事を思った。 「ま、そゆコト。で、キミは蔡未をキレイだと思う? どっち?」 「きゅ、急にそんな事言われても……。それって、今すぐ答えなきゃいけないような事なんですか?」 「第一印象っていうのは案外、バカにできないモノなんだよ。その捉え方次第で、今後の人生が様変わりするコトだってある。キミはそうじゃないのか?」
/955ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加