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「えっ、マジ? 蔡未、オレと一緒に来てくれないの?」
男は落胆すると、両手を前に出しながら、蔡未との距離をジリジリと詰めていく。
がーーそれをすんでのところでヒラリとかわし。
「ええ、私はどこにもいきません。いくら抱きつかれて愛をささやかれても、その気持ちが変わることはありません」
「……そうか。ならいいや、今は。さすがにいきなりすぎたって、オレもわかってはいたしな」
諦めたように言うと、男は宗太の方に向き直る。
そして、品定めでもするかのように、視線を上下に何度も往復させた。
「へぇ……蔡未はこういう男子が好みなのか。宗太くんだっけ? キミ、蔡未のコトどう思ってる?」
ド直球の質問。
「どうって、それは……」
「蔡未って美人だと思うんだよ。これは誰もが抱く共通認識なんじゃないかって、父親としてオレはそう思うわけだ」
「なるほど、父親として……えっ? 父親?」
一瞬、聞き間違いかと思った。
確認を取るように、蔡未の方を一瞥する。すると。
「……はい、事実です」
「うそーん……」
思わず心の声が漏れた。
まさか、蔡未の父親だったなんて。勝手に勘違いしたのはこっちだが、率直な事を言わせてもらうと、あまりにも似ていない。
それは銀髪と茶髪という違いもあるが、もしかしたら蔡未は母親の方に似ているのかもしれない……と、そんなどうでもいい事を思った。
「ま、そゆコト。で、キミは蔡未をキレイだと思う? どっち?」
「きゅ、急にそんな事言われても……。それって、今すぐ答えなきゃいけないような事なんですか?」
「第一印象っていうのは案外、バカにできないモノなんだよ。その捉え方次第で、今後の人生が様変わりするコトだってある。キミはそうじゃないのか?」
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