第14話 思ったようにいかない。ゆえにメイドは自らの環境に苦悩する

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普段のキャラで隠れがちだが、蔡未が美人だというのは否定しない。 というか、むしろずっと前からそう思っている。 だが、実の父親に引き出される形でそれを口にするのは、なにか……違う気がした。別に恥ずかしいというわけではない。多分。 「いい加減にしてください。これ以上、私の領域を踏み荒らすというなら、いくら父親といえど、さすがに許し置くことはできません」 憤慨するようにして、蔡未がそうクギを刺す。 「それって、オシオキとかそういうの?」 「着信拒否します」 「うわぁぁ〜〜〜ん! ごめんよ蔡未! お前に着拒なんてされたら、オレもうこの先、生きていけない!」 「されたくないなら、ひとまず今日のところは帰ってください。これ以上、宗太さんに父親の醜態をさらしたくないので」 「我が娘ながら毒舌が過ぎるっ。まー、でもわかったよ……若者の時間を邪魔するほど、オレも野暮じゃないしな」 そう言って、人差し指で自らの側頭部をかくと、 「あ、そうだ。まだ自己紹介してなかったっけーーオレは南條勇(なんじょういさみ)。蔡未の父親で、見ての通り不老不死なんだ」 と、真顔のまま勇は言った。 「えっ。不老不死って……」 「……冗談。まったく、キミは反応が面白いなぁ。気に入った、また個人的に会いに来るよ。Пока 〈パカー〉」 そうして背中を向けると、手をヒラヒラと振りながら勇は去っていく。 まるでつむじ風のような人だった。なにもかもを巻き込み、こちらが順応しようと思った矢先、その場からいなくなる。 もしこれがゲームなら後々、本当に再会したりするのだが……できれば、それはやめてほしいと願う宗太だった。 誰かの父親と話すという行為は、それだけでひどく緊張してしまうものだから。
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