第14話 思ったようにいかない。ゆえにメイドは自らの環境に苦悩する

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「……てか最後のアレ、なんて言ってたんだ?」 「Пока 〈パカー〉。ロシア語で『またね』とかバイバイとか、そういった意味です。この場に生粋のロシア人はいないのに、どうしてああも意味のわからない事をするのでしょうね」 「ホント、父親相手に容赦ないなお前」 「あの人にはこれくらいがちょうどいいんです。……で、どうしますか?」 「どうするって?」 「この後の予定です。すでに断りの旨を伝えてしまいましたが、今は時間がだいぶ余ってしまいました」 蔡未と同じように、携帯で時刻を確認する。 約束の時間はとうに過ぎているが、出かけるにはまだ全然余裕がある。それどころか、お互い遅刻しただけ、と言っても良いくらいの誤差。 「……そうだな。遅れはしたけど、今から本来の目的を実行するとするか」 その提案に、蔡未は納得したように小さく頷いた。 地元から電車で数十分。 街に出向いた宗太と蔡未は、ひとまずあちこちをブラブラ歩いてみることにした。 目についた店に入ってみたり、食べ歩きをしてみたり。別に特別な事はなにも起きなかったが、二人にはそれで十分だった。 唯一、例外があるとすればーー。 「あ〜、ちょっといい? 君、モデルの仕事とか興味ないかな?」 「いえ、私はメイドなので、それ以外の事には興味ありません」 蔡未はそう言い置いて、道端のスカウトマンを華麗にいなす。 と、その矢先。 「ねぇねぇ、そこの彼女! すごい美人さんだね〜、よかったら俺とお茶でもしない?」 「いえ、私はメイドなので、見知らぬ人とお茶したりはできません」 (いや、てかさっきから俺隣にいるよね? 相手の視界から完全に消えてんの?)
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