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宗太の言葉を気にも求めず、蔡未は店内を歩く数多のメイドを真剣な眼差しで観察していた。
明らかに楽しみ方を間違えているが、蔡未の本来の目的はそれだったのだろう。
自分以外のメイドに会う事。そして、その相手がどれだけのメイド力を兼ね備えているか。
どちらにせよ、おかしな客というのには変わりないが。
「……それにしても驚きました」
「驚いたってなにが?」
「これまで、宗太さんがメイドカフェに行ったことがないという部分です。普通、ギャルゲーを好きな人は、こういった場所にも好んでいくものではないのですか?」
「それは偏った認識だな。メイドカフェっていうのは、今はだいぶ大衆化している。昔ならともかく、今の時代だとス◯バに入るくらい勇気のいる事なんだよ」
「たしかに、客層はよくあるカフェと同じに見えますが……。しかし、表面上そう見えるだけなのでは?」
「表面上って?」
「ああ見えて内心、『あ〜〜〜メイドさん萌え〜〜〜でもお皿を置く時に音を出すのはメイドとしてどうかと思うでござるっ』とか考えているのではないかと」
「それは間違いなくお前だけだな」
そんな風に話していると、やがて頼んでいたメニューが机の上に運ばれてきた。ホットコーヒーが二つ。
食べ物を頼まなかったのは、値が張るのというのもあったが、様子見というのが一番大きな理由。
同級生の女子の前で、食べ物に愛を注入されるのはとても羞恥が耐えられない。
「……コーヒーは普通でよかった」
「なんの変哲もない、ただのコーヒーで私は少し拍子抜けしました。てっきり、メイドカフェらしいなにかがあると思っていたのですが」
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