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クラスメイト達は、ぞろぞろと教室を出ていく。その中には孝介の姿も混ざっていたが、宗太は特に気にする素振りもなくそれを見送った。
スクールカースト上位の人間はこういう時、強制参加と相場が決まっている。
「ふぅ……」
クラスメイトが出ていくのを確認すると、一千夏は小さく息を吐き、帰り支度をはじめる。
このタイミングを逃すわけにはいかない。
宗太は内心、緊張しながら、一千夏の席に近づいていく気概を見せた。こうしてる間にも、時間はどんどん過ぎていくからだ。
そしてーー時計の長針が数回ほど大きく動き。
「……っ! あのさ、ちょっと話があるんだけど……!」
勢いよく席を立つ宗太。だが辺りを見回すと、すでに教室には誰もいなかった。
しばらくの間、その場にポツーンとたたずむ。
自らのヘタレ具合に辟易した。こういう時、ゲームの主人公ならどんな行動を取るだろう。
考える宗太だったが、そう思った時点ですでに答えは決まってるようなものだった。
「……追い、かける!」
カバンを肩にかけて、宗太は素早く教室を飛び出した。
校門までの道中、一千夏の姿はどこにもなかった。
もしかして、もう帰ってしまったのだろうか。教室でボーっとしてたのは数分くらいだったから、その可能性は十分ある。
(ここから道路に出るまで、道はこの坂しかない。そこまでに会えないと、また全部振り出しだ)
そうして走り続けて、坂を下り終えた頃。10メートルくらい先で横断歩道の信号を待つ、一千夏の姿を見つけた。
「な、なぁ! 俺、君に話があってーー」
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