COSMIC BOX

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「ふぅ、危うく火事になるところだったぜ」 普通にカーペットが燃えてた。火のついたジッポライターを落とせば映画「ダイ・ハード」を観てる人は分かると思うが、大変な事になるのは明白だ。 「…何かゴメンな、痛くないか?頭打って」自分のせいも数十パーセントあるので聞いておく。 「大丈夫、修行してるから…」「ん?今なんて?」あんまり聞き慣れない”修行”なるワードが銀髪碧眼の外国人から飛び出たのに思わず聞き返す。 「い、いや…それよりっ名前!」 「な、名前?」何を急に言ったんだろうと思ったが、すぐに自分は名乗っていないことに気づいた。 「あぁ、俺の名前は木戸 那海だ」我ながら苗字みたいな名前だと思うけど、それよりも問題なのは 「…トナカイ?」 もう何度も言われ続けているワードを初対面の外国人の少女が口をついて出てくるのは最早、様式美。 「違ーーーう!!”き・ど・なかい”だー!!」全力で否定するのもよくあること。 「まぁ、こいつもトナカイトナカイ言われ続けてるからな。あっ、俺は宮川 曽利男(そりお)。決して”ソリ”じゃないぞ、車の名前と一緒だ。あと、こいつとは叔父と姪の関係だな」 「俺の親父の弟だよ」那海が嚙み砕いて飲み込みやすい大きさにして説明する。 「それを俺が面倒みてやっている訳だ」 そういう言い方で疑問に思う事は当然ある。 …って、そんな事はどうでもいい。それよりも… 「とにかく、あそこで何してたんだ?」 「黙秘する」どこをどう見ても外人に見えるエミリアはどこで習ったのか難しい言葉を使って拒否した。 「…それで、これからどうするつもりだったんだ?」 「黙秘」エミリアは目を瞑って そっぽを向く。整った まつ毛が何となく印象的だった。 「…それじゃあ、コレは何だ?」那海が おもむろに手を差し出す。その手のひらに乗っていたのは形がプラムの種のようで、大きさは少し大きいアボカドサイズの種らしきものだった。 「そ、それは…」エミリアは最初、片目を開けて一旦閉じたがすぐに目を見開き驚愕の表情に変化した。 「ダメだっ!何も想像するんじゃない!!」突然エミリアがよく分からない事を叫ぶ。 「えっ?想像?」言われると逆にインスピレーションが刺激されてしまうのは自然の摂理だ。現実とは無情なものである。 すると、その種のようなものからニュルニュル緑色の蔦が伸びていきある程度の大きさに纏まって幾重にも蔦が重なり合いそれが急速に萎れる。 蔦は消え去り、その後に残された物を見た那海は「へ?」と間抜けな言葉が漏れてしまったが それもそのはず、その手にあるのは銀色の光沢を放っている明らかに有機物から生まれてきたとは思えない物質があったからだ。しかもそれはほとんどの人が分からないはずの… 「きゃ…キャブレター?」 そう、キャブレター。日本語では”気化室”と呼ばれるエンジンへ燃料をエンジンから吸い込む勢いだけで気化させて空気と混ぜて送り込むという原始的な 機械。最近のバイクには上位互換のインジェクションが普及しているので要らなくなった機構である。それが何故か那海の手の中にあるのである。オークションでもソコソコの値段なのだけど”ラッキー”なんて思える気楽な性格ではない。 「何なんだよッこれ!」思わず叫んでしまうのは当たり前の反応だった。 「…知らない」と、エミリアは言うが絶対に嘘だ。明らかに彼女から落ちた物である。腰に提げてる布袋にはそのサイズの物が沢山入っている感じにボコボコ膨れている。そもそも何か顔は正面を向いているのに目線は一切合わせようとしないし、11月のひんやりとした気温なのに汗が養老の滝の如く湧き出ている。 …いやッ誤魔化すの下手過ぎないか?! 「…何で何もないところからこんなものが出てくるんだ」 那海は尋問しているみたいで気分が悪いけど、この意味不明さもハッキリしないのは気分が良くない。 しばらくエミリアは彫刻のように固まったまま微動だにしないでいたが、遂に観念したのか「…誰にも言うんじゃないぞ」と念を押す。那海と曽利男は雰囲気的に飲まれて神妙に頷く。 エミリアは周りを伺い、声を潜めて言った。 「私はこの地域の担当になっただ」と
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