COSMIC BOX

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「いたたたた…」バイクのフロントが持ち上がってウィリー状態で突っ込んだのは覚えてる。…というかそれが全てで、バイクは路地に転がっている。少女も倒れている。 「いや、おい!大丈夫か!」危うく流してしまいそうになったが、人が倒れているのは問題だ。 急いで駆け寄り、抱き起こす。 「くぅーすぅー」無防備に寝息を立てていた。とりあえず生きている事は間違いない。問題は頭を打ったりして障害など残っていないかだ。 「ん?何だコレ」彼は彼女の側に落ちていた 「ヨイショっと」バイクを起こして少し傷ついたカウルを見て少し落ち込み、少女を乗せて押して帰る。警察に連絡して事故処理してもらうという基本をすっかり抜け落ちた奴はトボトボとその場を後にした。 明るい…あぁ、私寝てたんだ………あれ?いつ寝たっけ?… ガバッ 起き上がってみると、そこは知らない部屋。辺りを見回す。奥の方で背中を向けて何かしていた。 (あっ、確かアイツに私の仕事を見られて…で、始末しようとして…)ここで記憶が途切れる。 (うん、間違いないアイツだ。ヘルメット被ってて顔はハッキリ見えなかったけど、もう少しガタイが大きかった気もするが、絶対にそうだ!) 少女は若干決めつけ気味にそう思った。 (フフフ、まだバレてない筈だ…しかも向こうを向いて無防備だ。今度こそ始末しないと…) 少女は しゃがんで一気に跳躍する。コンマ5秒ですぐに彼の後頭部が迫る。(少し眠ってもらう!) と 「わからん!!」彼がタブレット端末を振り上げた。 ”ガンッ”と衝撃が伝わり、目の前に少女が落ちてきた。 「うわっ!…って大丈夫か?」顔を押さえてジタバタしている少女に心配して声をかける。少女は しばらくゴロゴロ転がっていたが、収まってきたのかピタリと止まった。 そーっと覗き込む。手で顔が隠れたままだ。少し躊躇いながら手を退ける。と、激突の為か髪が重力に従い逆立っておでこまで見える状態の顔が少し赤く腫れているようだった。目も潤んでいて相当痛かったのだと判断出来る。 しかし、それ以上に彼に印象付けられたのは彼女の容姿だった。家に帰って寝かせる時から気づいていたが、彼女は日本人ではない。色素の薄い髪と碧い瞳、だいぶ小柄だけどモンゴロイド系には見えない。 「…あ」 ジーッと見つめ続けていたことを思い出した。「ご、ごめんっ」何に謝っているのか自分でも分からないけども つい口から出て手を離した。 「ーーーッッ!!」少女は顔をさらに真っ赤にして手のひらを彼の顔に当てて押しのけた。顔面に手をゴッドフィンガーされた彼は前を見る事が出来ない。これじゃあ夜道も歩けない。彼が抵抗するのも当然の事でジタバタもがくのも当然の事で振り回した手が彼女のささやかな胸に当たるのも当然の事だった。 「ーーーーーーーーッッ!!!!」掴まれた顔面を潰すように手に力が入るのが手に取るように分かる。…手に取られている立場だけど。 「ヒィッ!!」男ながら情けない悲鳴を上げるが、命の危機を感じたのだからしょうがない。 「いいか……このまま離れろ…そしてこっち見るな」二つの要求を同時に彼に突きつけてきた。 その願いのうち後者は今現在、叶っているとも言える。彼の目に見えているのは手しかないのだから。だが、その代わり前者は彼女が手を離さない限り叶わないというジレンマ。 この後、硬直状態の二人に起きた事態とは…!? ガチャ 「いやぁ、パチンコで当たりが止まらなくて結局閉店までいたわー」いきなり入って来るとともに言い訳しだした おっさん。二人が一時停止ボタンを押されたみたいに固まっているのを確認すると「…悪ぃ、ちょっと用事があったわ…」とパチンコ店が閉店するくらいの時間に自分の家を出て行こうとする おっさん。 「いや、待て…」言いかけた時、突然風が吹いた。と、思ったら彼女が飛んでいった。おっさんの目の前で着地すると立ちふさがった。 「見られたからには生かしておけない…」と、何やら円筒形のダイナマイトのような物を取り出した。「これでまとめて吹き飛ばす!!」 正気じゃない言動だ。第一そんな事したら爆発物の反応が出るし余計に怪しい証拠が残るだけのように思う。 よく見ると目の焦点が合ってないように思える。更に言うと汗が風光明媚な栗又の滝のように流れてる。ダイナマイトのような物の導火線みたいな線が筒の下の方から出ているのに、上から垂れていると仮定した時にちょうどいい位置にライターを持っている。 色々ヤバい。 「オイッ…」っと彼がとりあえずどうすればいいか分からないけど、言葉を出した瞬間 「落ち着け」ドガしっ! おっさんは彼女に瓦2枚半割れそうなチョップをお見舞した。この人が本気を出せば瓦5.7枚くらい割れるから女の子相手に手加減しているのだろう。 「???」少し涙目でおっさんを見る彼女。本日三分ぶり二回目の涙目。 「とりあえず、あんたは誰なんだ?」今やっと最初に来るべき質問にたどり着いた。 「…エミリア・ハッカライネン」綺麗な外国語で答える彼女。その透き通った声に少し焦げ臭さを感じた。
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