B級刑務所2

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M野君のガイドヘルパーをするようになって2ヶ月が経過する 週3回ガイドに付く。月曜日は1時間の散歩、駅でいうと2駅程の距離を散歩する。 1時間以内に帰って来なければいけない。 火曜日と金曜日は2時間のプール。 M野君は歩くペースが特段に速い。 歩くペースを落としてもらいたいのだが言葉が通じない 最初は付いていくのがやっとだったけど、 最近では私の方が先に歩いてペース配分を している。 M野君の歩くペースが余りにも速いので前任のガイドさんが腰を痛めたという経緯で 私に仕事が回ってきた。 プールでは浅い自由レーンで頭からザブンとダイブしては浮上するというルーティンを繰り返している。 M野君の障害手帳には精神障害1級と記載されている M野君はオウムがしゃべるようなしゃべり方で奇声を発している 彼を侮辱しているのではない、特徴を分かりやすく記載しているだけだ 「前を見なさいといってるでしょ」だとか 「早くしなさい」 というような言葉を延々と繰り返す M野君はグループホームで暮らしている 以前は自宅療養をしていたのだろう。その時にお母さんが口癖のように言ってた言葉を繰り返しているに違いない 後は右手と左手をクロスして顎の下に持っていって 「ニン、ニン、ニン、ニン」 と呪文のように呟く 意思の疎通はできない しかし、私は歩いている時にM野君に話しかける 「最近は、日が落ちるのが速くなったね」 「…………」 返答は何時も返ってこない しかし、私は話しかける 「今日、プール楽しかった?」 「…………」 それでも、一方的に話しかける 「寒くなってきたね」 「…………」 意思の疎通はできないがこちらの話しかける言葉は理解している 人がいない所では私がマスクを下げて見せて 「M野君、マスク、ココまで下げていいよ」 と言うと同じようにマスクを下げる。 しぐさが可愛い
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