フレッシュオイスター・瀬戸内レモン添え

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亮に意味深な事を言われて、広重はぼーっとしたまま報告書をまとめていた。 「おいおい、誤字だぞ。ちゃんと画面見てる?」 広重の顔の直ぐ横に村瀬の顔が近づいていて、広重はギョッとした。 「あッ、指摘ありがとうございます」 狼狽えながら広重は文字を打ち直す。 「それ終わったら、ちょい付き合えよ。オーシャンのことで連絡事項あるから」 村瀬はそう言うと広重から離れた。 ふたりの姿を亮がジッと睨みながら見つめていた。 会議室に村瀬と広重は入ると、村瀬はオーシャンのファイルを広重に渡した。 「それ、俺が独自にまとめたファイル。良かったら使えよ。あの店の店長って俺が貴彦を推薦したのよ。この会社で1番伸びる奴だって目を付けてね。案の定、3年で、この会社の稼ぎ頭になってくれてさ」 自慢気に村瀬は言う。 「今じゃ、トップで顔でもある御笠会館のフレンチよりも上を行ってると思ってるさ。まぁジャンルが違うからここだけの話な。でもそれだけ人気がある店舗だ」 村瀬の言葉に、だんだん重圧を広重は感じてきた。 「俺を超えるぐらいまだ伸ばしてもらわないとね。期待してんのよ、マジで」 ふふふと頬杖をついて村瀬は言う。 「ありがとうございます。頑張ります」 広重は微笑しながら応えた。 村瀬はジッと広重を見つめる。 「本当は吉国にと思ったんだよね。でもあいつと貴彦じゃソリ合わないと思ってさ」 村瀬の言葉に広重は少しショックだった。 亮を村瀬は自分より上に思っていたんだと思った。 「お前に貴彦が取られるって危惧した」 へ?と間抜けな顔で広重は村瀬を見た。 「苦渋の選択って奴?流石に私情挟んで吉国をオーシャンのエリアマネージャーにするのはまずいって冷静な判断、俺だって持ってんのよ?」 ふふふと村瀬はまた笑う。 吉国に劣ってるとかそう言う理由じゃなかったんだと、広重はホッとした。 ちゃんと仕事を認められての判断だと分かった。 「別に、俺、犬神さんと。つーか、男の人に興味ないですよ!」 広重が真っ赤になると村瀬の目が鋭くなった。 「無意識って怖いよね。そうやって……ま、いっか」 意味深なところで村瀬は切った。 広重は気になって仕方ない。 「どういうことですか?無意識って!」 広重がムキになって村瀬に尋ねる。 「さぁ?そのうち気づくだろ」 余裕の顔で村瀬は言う。 村瀬に転がされてる感が広重は否めない。 「俺がなんであの日、鍵かけてねーのに貴彦とヤってたと思う?」 挑むような目で村瀬は言った。 「……俺に取られると思ったから、わざと見せつけたとか言わないでくださいね!」 言いながら、貴彦の色っぽい目を思い出した。 「正解。流石だね、道明ちゃん」 ふざけながら村瀬は言う。 「貴彦は俺の男だって忘れないでねー。手出したら許さないよー」 ニッコリ笑っているがその目が笑ってないのは一目瞭然だった。 「出すわけないでしょ!」 広重がそう言うと、村瀬はただ微笑むだけだった。
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