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一通りオーシャンの業務内容を村瀬と貴彦から説明を受け、広重も仕事モードになった。
「今までどんな店で働いたの?」
頬杖をついて貴彦は広重に尋ねる。
その顔が妙に色っぽくて広重はまだまともに貴彦が見れない。
「だ、大学時代から、MIKASAフードのイタリアンの店でバイトしてました。それで、卒業と同時にMIKASAフードに就職して、バイトしていた店でエリアマネージャーの教育として経験を積んで店長までやりました。そして去年エリアマネージャーになれました」
ふーんと言う顔で貴彦はジッと広重を見る。
「道明は俺が拾ったんだよ。その店は俺のエリアだったんでね。こいつドMな性格でさ、クレーマーの対応も良くてね。で、この顔目当ての女性客も多くて、あっという間に売り上げ伸ばしてくれたよ」
村瀬に褒められて、広重は真っ赤になりながら嬉しかった。
その顔を見て貴彦はムッとする。
「イケメンなのは認めるけど、優柔不断そうな顔だよね」
小馬鹿にしたように貴彦は言う。
「ドMなんだ。確かにそんな感じ。イジメ甲斐ありそうだよね」
ふふふと笑って貴彦は広重を弄る。
広重は居た堪れなくなり、真っ赤な顔で貴彦を見た。
「あのッ!俺、見たこと誰にも言いませんから!なので、仲良くしてくださいよ。お互い、プライベートなことには口出ししないと言うことで」
広重の言葉に、貴彦は村瀬を見る。
「これって脅迫?言わない代わりに、仲良くしましょってこと?」
村瀬は微笑するが何も言わない。
「違います!そんなつもりじゃ!」
広重は困った顔で貴彦と村瀬を見る。
「大体、鍵もかけずにあんな……俺じゃない違う人に見られたら」
オドオドしながら広重は言う。
「いつも閉めておくんだけど、道明が来るの分かってたから開けておいた。この時間、業者も来ないからね。つーか、思ったよりお前が来るの早くてこっちがびびった」
そう言いながら、村瀬も貴彦も少しも慌てていない。
「もうこの話は無しな。道明だって誰にも言わねーよ。言えるわけないじゃん、この道明が」
ニヤリとして村瀬が広重を見ると、広重は首が外れそうなほどブンブンと頷く。
「もうすぐスタッフが集まる時間だろ?俺は帰るけど、お前は仕事の内容きちっと把握して顔売っとけ」
スッと村瀬が立った。
「何かあれば俺に連絡して」
村瀬は広重にそう言うと先に帰った。広重は村瀬を見送ると貴彦を見た。
「何?ジロジロ見るなよ」
貴彦はそう言ってバックヤードに行くと、食材のチェックを始めた。
「あの、店長とエリアマネージャーは意思の疎通が1番大事です。よろしくお願いします」
広重はそう言うと深々と頭を下げた。
貴彦はジッと広重を見つめていたがフッと笑った。
「ああ。仕事とプライベートは切り離す。よろしく」
貴彦はそう言うと、また食材のチェックを始めた。
広重もホッとすると、スタッフが揃うまでメニューを見たり、パソコンで管理情報を見たりした。
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