394人が本棚に入れています
本棚に追加
本日の気まぐれタパスとピンチョス
御笠グループの外食事業を経営する、MIKASAフードの社員でエリアマネージャーの道明広重は、上司であるエリアチーフマネージャーの村瀬透の指示により、六本木駅近くのビルのテナントに入っているシーフードバル『オーシャン』に向かっていた。
腕時計を見ると、約束の時間まで30分早かった。
カフェでお茶でもしようかな。
でも、約束の時間、10分前には着かないとまずいか。
うーん、早いけど行っちゃうか!
約束の時間は14時だったので、広重は、とりあえず店をチェックしようとオーシャンに向かった。
オーシャンに来るのは初めてだった。
入り口の外観は青と赤で鮮やかで、ガラスの扉にはcloseの札が掛かっていた。
このオーシャンは場所柄かとにかくオシャレな感じだが、その割に敷居の高いイメージはない。
評判の良い美形店長やスタッフ達のお陰で売り上げも良く、MIKASAフードの中でも一目置かれている店舗だった。
広重は店の中を覗くが、まだ開店前なので店は空いていない。インターホンの無い、スタッフ用の裏口は鍵が空いていたのでドアを開けて中に入った。
狭いフロアにバックヤードとスタッフルームのドアがある。
耳を澄ますと、stuff roomと書かれたプレートの付いたドアから声が漏れて聞こえた。
広重は、上司であるエリアチーフマネージャーの村瀬がもう来てるのかと思った。
ドアをノックして開けようとした時、中から聞こえる声に広重はドキリとした。
「………んんッ!……そこッ……もっと!また、イくッ!」
男の喘ぎ声だった。
「もう何度目だよ。そろそろ、俺もイくぞ。もう直ぐ道明が来る」
道明と名前が出て広重はビクッとした。
その声は村瀬だった。
えー!
ちょっと待ってよ!
何してんだよ!
イくぞって何?
なになにー!
広重は焦って後退りをした。
中で何が行われてるのか想像もできないほどパニクってた。
「とーる、イって!俺も出ちゃう!」
男の大きな声に広重はドキドキが止まらない。
出ちゃうって何がだよ!
マジか?
って、村瀬さーん!!
焦った広重はバックヤードの扉を開けてバックヤードに逃げ込んだ。
冷静になろうとしても冷静になれない。
とにかく平静を取り戻そうと深く息を吐く。
広重はふと視線を感じその方向を見ると、広いテーブルの上に上半身うつ伏せになった男と、その男のバックに、スラックスを緩め腰を押しつけ抱きついている村瀬と目が合ってしまった。
このふたりが何をしているのか直ぐには理解できなかったが、バックヤードとstuff roomの中は繋がっていたことだけは分かった。
「○×□@○△※◎!!!」
声にならない叫び声を広重は上げた。
この状況をどうすれば良いのかまでは考えられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!