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フレッシュオイスター・瀬戸内レモン添え
月曜日の朝は、1週間の報告の会議から始まる。
エリアマネージャー達は、自分たちが担当の店の売り上げと、それに伴い、接客から料理の内容、客からの反応をそれぞれ報告して次の課題を考えるのだった。
「道明が新しく受け持ったオーシャンは、常に我が社の上位クラスの店舗だ。プレッシャーに負けずに、伸ばして行ってくれ」
部長にハッパをかけられて広重は返事をした。
その広重の隣に座る、常にライバルでもある吉国亮も、自分の成果を報告した。
会議中、村瀬は広重を一切見なかった。
いつもそうだったのかもしれないが、今日はなんとなくそう感じてしまった。
会議が終わると、それぞれが動き出した。
「オーシャン貰ったのはデカいよね」
広重の背後から亮が言う。
広重の同期でずっと広重をライバル視している。
パーマをかけた茶色味を帯びた髪をした、甘いマスクをしたイケメン。チャラそうに見えるが仕事はキチンとこなす男。
常に自信を持ち、広重とは真逆の性格だった。
「何?欲しかった?」
ムッとしながら広重は言う。
その顔を見て亮は笑った。
「まーったく、直ぐそうやって顔に出る。バカ素直だな」
亮の言葉に広重はハッとして赤くなる。
「顔に出やすいんだよな。ダメなの分かってるさ」
顔を押さえて広重が言うと亮は笑う。
「分かりやすくて俺は助かるけどな。何考えてるか分からない奴より、手の内が読めるからさ」
「なんだよ、それ」
バカにされてる気がして、また広重はムッとする。
こう言うところがダメなのかとため息をついた。
「まぁ、お前がオーシャンをモノにしたところで、俺が担当してる店は全て平均上回ってるしね。トータル的に見て負けてると思ってないし」
余裕の顔で亮は言う。
「オーシャンの犬神さんてどんな感じ?」
亮の口から貴彦の名前が出て広重はピクッと反応した。
「なんで?気になるの?」
広重が尋ねると亮はジッと広重を見つめる。
「うん。あの人めっちゃイケメンじゃん。なんて言うの?フェロモン系?」
「知らないよ、そんなこと!男のフェロモンなんて嗅ぎ分けられるかッ!」
広重はムキになって言う。
亮のせいで嫌でもまた、貴彦と村瀬のあのシーンが思い浮かんだ。
気持ち良さそうな顔をした貴彦を思い出すと身体がゾクリとする。
頭からずっと離れなくて、広重は思い出すたびに頭がクラクラしてくる。
広重のことをジッと見ていた亮が、ムッとしながら広重の頬を片手で掴んだ。
「……変な顔」
プッと笑いながら亮は広重を見つめる。
「惚れるなよ」
小声でそう言って亮は広重の前を去っていった。
広重はびっくりして亮の姿を見送る。
「惚れるなよって、なんだよ、それッ!」
広重はそう言ったが、心臓がバクバクと早くなっていた。
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