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蜃気楼フィッシュ
「ねぇ、ママ」
「なぁに?」
「あのモヤモヤしたのは?」
「…? あぁ、あれは遠くに、うーんと遠くに大きな水たまりがあるの」
「! お魚もいる!?」
「えぇ、きっと大きな! 雛ちゃんよりおっきなお魚さんいるかもね!」
そんな話を幼い頃に母に聞かされていたことを覚えている。
事実、二十六になった今でもあの蜃気楼には大きな魚が住んでいると思っている。
あの現象は蜃気楼と呼ばれ、大きな水たまりなどないとは理解しているが、母は私に嘘はつかなかった。
だからきっと、この広い世界にはきっと存在すると信じていた。
そんな私の趣味は、暇を見つけては世界地図を広げ大きな湖を見つけては、インターネットの検索エンジンに湖の名前を打ち込んで調べる。
更に興味がわけば、書籍も購入し隅々まで調べているが、未だに私より大きな魚が住む場所は限られていた。
それに、その魚を調べてもきっと母が教えてくれた魚ではないと、直感でわかる。
こう、何とも言えない「違う」漠然とした感じがするのだ。
海に行けば? なんて思うかもしれないが、私は陸地に存在する場所で探していた。
もう母は天国から「探さなくてよいよ」なんて夢の中で囁くときがあるけれど、既に私の生活の一部となっているので無理であろう。
お酒もアクティブな趣味も無い私が、唯一続けられていることの一つであり、目指す夢の一つでもあった。
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