蜃気楼フィッシュ

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 私が調べ続けてきた湖ではないが、大きく長い水たまりのようなものかもしれない。  そもそも、母は湖と一言も言わなかった。  一気に画面を閉じると、私は準備に取り掛かる。  体が言う事をきかない、ただずっと内に秘めていたものが解き放たれたような気がしてならない。  正直なことを言えば、カスピ海に生息しているチョウザメを私は以前調べていたが、今回のような状態にはならず流してしまっていた。  湖というキーワードに固執するあまり、この魚の存在を確認できていなかったというのもあるが、きっと母が呆れて私を導いてくれたのだろう。  次の日に会社に着くなり、私は上司に一枚の封筒を差し出した。 「これ? 本当なのか?」 「はい」  私は何も迷うことなく告げる。 目の前の上司は大きなため息を一度つくと、しぶしぶ封筒を受け取ってくれた。  それから退社するまでの期間、私は準備に明け暮れる。  釣りなんてできないけれども、人気のあるツアーということもあり、同船させてもらえないか交渉してみるつもりだ。  パスポートも取得し、地味な生活をしていたのでお金には十分な余裕がある。
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