向こうにある声

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男は三度目の光を浴びて目が覚めた。 「もう三日か……」 何もない暗闇の部屋。 僅かに崩れている壁から差し込む光が、この部屋に閉じ込められてからの日数を分らせていた。 何故閉じ込められたのか、自分が何者なのかさえも分からない。 コトッ、と音が鳴ると、部屋の隅にいつものようにパンと水の入ったペットボトルが置かれていた。 男はこの食事に手をつけない。 毒が入っているかもしれないという疑念もあるが、男はこのまま死ぬのもありじゃないかと考えていた。 光が差し込んでいる隙間を根気よく掘っていけば表には出られるかもしれない。 だが、 「表に出たからといって俺に何が待ってるんだ」 記憶のない自分は、ろくな事しなかったからこんな場所にいるんだ、それならこの場所で死んだ方が楽だ、と考えている。 食事も水も摂らないでも平気だったが、何もする事がない時間だけが耐えられなかった。 「誰かいないかー」 男は思わず隙間に向かって叫んでいた。 返事なんかある筈ない、と自分自身を笑っていると、 「いるよ」 少女のような澄んだ声が隙間をつたって返ってきた。
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