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その瞬間、ゾクッと背筋に悪寒が走り、おびただしい量の汗が吹き出した。
ああ、今。俺の後ろに『化物』がいる。
脳内でガンガンと今すぐ逃げろと警報が鳴る。それなのに、化物に心臓を握られているような感覚に指一本動かすことが出来ない。
『失せろ、餓鬼。こやつらは私の獲物。さもなくば、喰らうぞ』
『化物』から逃げるように黒い腕は次々と線路の中に引っ込んだ。
黒い腕が線路の中に引っ込むとあんなに暗かった線路の中は夕暮れ時の明るい薄暗いオレンジ色に戻る。電線に留まっていたカラスは化物から逃げるように翼を広げ、カァー、カァー、という鳴き声だけが取り残された。
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