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「大丈夫ですか!?」
焦った若い男の声に『化物』はパッと手を離した。
「一体何が・・・・・・」
「ああ、申し訳ない。彼らが線路の中で取り残されていてね」
電車から飛び出してきた車掌に『化物』は説明した。どうやら、『化物』が非常停止ボタンを押してくれていたようだ。
(一体何者なんだ、この『化物』は)
慣れているとは言ったものの会話が成り立つ『化物』を見るのは初めてだし、わざわざ容れ物まで用意しているということはこちら側で生活しているのだろう。
いや、今はこの『化物』よりもあの生徒は無事だろうか。
キョロッと辺りを見ると、線路の上で女子生徒が倒れていた。車掌が女子生徒に気づき、肩を揺らし起こそうとするが、眠りが深いのか起きる気配がない。
このままだと電車を動かせないので、車掌と『化物』が女子生徒を線路の外に移動させた。その際、『化物』は女子生徒の頭が痛くならないように持っていたビジネスバッグを枕代わりにして寝かせてやっていた。
女子生徒は見たところ怪我はないが、念のために病院に連れて行くことになった。『化物』が救急車を呼んでいる間に俺は線路に落とした眼鏡を拾い上げた。
「本当に呪われているな、この踏切は」
車掌は思わずと言ったように呟いた。
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