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「少し……。あの女子生徒は偶然ではなく故意で引きずり込まれたみたいですよ」
というか、人の死に纏わる噂話なんて、病院の中でするモノじゃないな。
「故意。そうか、ふふっ」
『化物』はその言葉にニタァと口の端を釣りあげた。作り物のように綺麗な顔から生み出されるその笑顔は異様なほどに不気味に映る。
「あんたは何が目的なんですか?」
「別に何でも無いさ。強いて言うならこの怪異に興味がある野次馬だ」
「あんたほどの大物が目的もなくこっちの世界でウロウロしているはずがないだろ。それに俺をここに連れてくる理由はない」
いくら第一発見者が俺とは言え、病院の付き添いに二人もいらない。中学生である俺がここにいたってすることはない。
「きみを誘ったのはただ単にあとで口説きたいからだ。逃げられたら口説くにも口説けないだろう?」
さらりとした台詞に目を剥いた。『化物』は先ほどの怪しい笑みではなく、俺の反応を楽しむようにクスクス笑っている。俺が言葉を続ける前に『化物』は立ち上がった。
「残念だが、暇潰しは終わりのようだ」
呼びに来た看護師を追う『化物』の背中に俺はガシガシと後頭部を掻く。
本当に意味が分からない。ただ、それ以上に。
(嘘は吐いていないんだよな)
それが余計にタチ悪い。
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