【第1譚】開かずの踏切

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「ごめんなさい」 その声に女子生徒の方を見れば、彼女は唇をギュッと結び、ゆっくりと視線を落とした。 「お手数おかけして申し訳ありません。迷惑かけましたよね。ごめんなさい」 何度も繰り返される謝罪に俺はふぅ、と息を吐く。 謝ってばかりいられるとこっちが悪者になったような気がしてくるから止めて欲しい。 俺達が女子生徒の病室に案内されると、彼女はすでに目を覚ましていた。検査結果によると軽い脳震盪だったらしい。彼女の親には連絡済みで病院に到着するのを待っている。 「きみは踏切に渡りはじめたときのことは覚えているのかい?」 『化物』の質問に女子生徒はふるふると首を左右に振った。 「最近、私ずっとそうなんです。ずっとぼんやりしているというか、ついさっきまであったはずの記憶が飛んでいるってことが……。ダメですよね」 (ぼんやりっていうレベルじゃないけどな) 確実に“呼ばれて”いる。
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