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【第1譚】開かずの踏切
◆・◆・◆
夢を視る。
踏切の前で遮断機が上がるのを待つ夢。
カンカンと絶え間ない警報機の音が耳を劈く。
明かりらしい明かりの無い踏切の辺りは真夜中のように真っ黒だ。
私が学校へ行くときによく利用する踏切と瓜二つのそれから顔を上げると制服姿の親友が線路の真ん中で立っていた。
なんで、加美ちゃんがあんなところに?
そう思うよりも先に身体が動いていた私は遮断棒を握りしめ、彼女に向かって叫んでいた。
「危ない」とか、「逃げて」とかそんなありきたりな言葉。それなのに、自分が発する叫び声が全く口から出てこない。
まるで、何か大きな力に邪魔をされているかのような。
次第に大きくなる電車の音に私はますます焦ってしまう。
電車が来る。
イヤだ、イヤだ。死んで欲しくない。
「加美ちゃん!」
私は彼女に手を伸ばす。私の声がようやく届いたのか彼女は私へと振り返った。そのまま彼女は私の手を取る············はずだった。
彼女は私が大好きだった優雅な微笑みを零すと口を開いた。
「××××」
目の前にパッと鮮血が散った。
グチャッ。バキッと肉と骨が潰される音が同時に再生される。
電車とは思えぬ速さで、鉄の塊は彼女を轢き殺した。
「加美ちゃん・・・・・・?」
彼女の血で染まった線路は少しずつ黒く濁っていく。
カンカンカンカン。
踏切音が響く。
遮断機はまだ上がらない。
ーーーー嘘つき
彼女の言葉が頭から離れない。
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