【第1譚】開かずの踏切

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◇・◇・◇ 「誰かがまた『開かずの踏切』で怪我したんだって」 上履きをすのこに落とした俺は振り返ると、同じクラスの女子が隣にいた友人に囁くところだった。 (ああ、だからか。いつもより声が煩いのは) 俺はひっそり溜息を吐くと、上履きに履き替え、教室へと向かう。 廊下ですれ違う生徒は示し合わせたかのように「今週、三件目だって」「マジかよ、多くね?」と『開かずの踏切』の話を口々に話していた。囁き声ほどの小さな声は次第に他の生徒にまで伝染し、末尾には『呪い』という言葉で締められる。 (呪い、ね) 信じているのか、いないのか。いや、ほとんどの生徒は呪いだなんて信じていないだろう。ただその方が面白いから便乗しているだけだ。 (なんだかな) 俺は階段を上がりながら肩を竦めた。 二ヶ月前の十二月二十三日。 クリスマスイブの前日に『開かずの踏切』で高校三年生の女子生徒が自殺した。
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