【第1譚】開かずの踏切

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『開かずの踏切』というのはこの辺りの住民なら誰でも知っている商店街へ向かう通りにある踏切のことだ。一度遮断機が下りると二十分近く待たされることから『開かずの踏切』と呼ばれていた。 『開かずの踏切』の周辺は昔は駄菓子屋や昔ながらのパン屋で栄えていた。だが、俺が小学生高学年ぐらいになると少子化で子どもが減っていたこともあり、閑古鳥が鳴きはじめていた。 それでもなんとか踏みとどまっていたものの現実は非情で、とどめを刺すかのように田舎の代名詞である大型のショッピングモールがこの近くに建設されてしまった。 それ以来、今ではすっかり衰退してしまい、閉店や移転した店の跡地が並ぶシャッター通りと化していた。 等間隔に並べられた電灯が薄暗く、数が少ないこともあり、『開かずの踏切』は格好の自殺スポットだった。 だから、本来なら誰かがそこで死んだところで一時的に話題のトップを飾るもののいつものことだと誰も気にしない。事故が多い交差点や人が多い駅で誰かが自殺したところで噂は風化し、問題なくその交差点や駅を利用する。それと同じように。 ただ、この場合、その後が問題だったのだ。
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