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彼が去った背中をずっと見つめていた。
白いTシャツにジーンズといったラフな格好。
見た目ではサラリーマンには見えなかった。
彼の残像が瞼に残ったまま
悩んだ挙句、アタシが買ったのは
三日月の形のピアス。
どういうわけか昔から三日月が好きだった。
満月でもない、半月でもない
三日月が好きだった。
誰からも必要とされて来なかったアタシに
お似合いだったから。
月で言えば私は満月なんかでは決してない。
半分さえ満たされない心。
満たされているのはせいぜい三日月程度。
それにこれからまだ満月になることもできる。それだけが唯一の望みだったはず。
彼の残像を抱えたまま
その場で買ったピアスを付け
その日は夕方まで天神でブラブラして
お洒落なお店でパスタを食べて帰った。
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