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俺は3年前の26のあの日––−––
七夕の夜からずっとこの場所を
動けないで立ち止まったまま。
車窓を流れて行く高速から見える景色に
溶け込んでいく過去の記憶。
何度この景色を凡子と見ただろう。
彼女を思い出すことだけが
今、俺と彼女を繋ぐただ一つの絆。
凡子の誕生日に贈る指輪を買って
佐賀の駅前の裏路地にある事務所に急ぐ。
唯一の趣味と言えばパチスロくらいのもの。
凡子が居なくなってからしばらくは
仕事もせずにただ一日中ボンヤリと
コインを入れてそしてレバーを叩く。
ただそれだけの繰り返し。
何も考えられなかった。
酒は全くの下戸…
だから酒に逃げることも出来なかった。
唯一の逃げ場がパチスロであり
出会い系の掲示板に
凡子を思い書き込むことだけだった。
ーー数海さん…アタシのことなんか忘れて新しい恋をして…
彼女の最期の言葉。
だから掲示板に何度も何度も書いた。
いっときは毎日書き込むこともあった。
それでも消えることなんてなかった。
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