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灯火に縋る
暗くなった部屋で蝋燭を灯す。揺れる光がほのかに部屋の中を照らした。
小さな明かりを頼りに先程まで外で観測した星の動きをノートにまとめていく。これと同じように天文のことについて書き込まれたノートが、この部屋には山のように積まれていた。
ひとりでこの仕事をするようになってどれくらい経っただろう。たまにどうしようもない衝動に駆られる。この部屋にあるノート全てに火を付けて、部屋ごと焼いてしまいたくなるのだ。
その衝動を抑え込んで、周りを見渡してからいつも気づく。私は今あの人が遺したものに囲まれているのだ。
それに気づいてそのたびに涙が零れる。
あの人は私の光だったのに、どうして私を残していってしまったのだろう。
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