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「四十年前、父が倒れ、会社は倒産の瀬戸際なのに、貴方が私から去ってしまって、私は本当に塞ぎ込んで自暴自棄になっていた」
「そんな時、スペースYから五百億円を超える資金が私の口座に振り込まれた。これで安曇工業は危機を脱し、父はアメリカで名医の治療を受けて回復出来たの」
「私はスペースYに問い合わせて、貴方が『ビヨンド』で『プロキシマb』に出発したことを知ったわ。それは生きて地球へ帰還することの無い片道の旅だと聞いて心が折れそうだった。何とか貴方と連絡したかったけど、『ビヨンド』の超長距離通信が故障していて貴方と話すことは出来なかったの・・」
「それを知った父は、彼が温めていたアィデアを実現させる為に全精力を注いだ。それは『縮退炉』と『超光速航法』を開発することよ。そして彼はそれを実現し、私に貴方ともう一度逢える機会をくれた」
「そして私はこの星をテラフォーミングして貴方の船がここに現れるのを長い間待っていた・・。『ビヨンド』が無事この太陽系に現れた時は本当に嬉しかった・・」
彼女はそう言いながら夜空を見上げた。あの時と同じ綺麗な星空が広がっている。
「その仔はテイトの八代目の子孫よ。顔、テイトにソックリでしょ? 彼も貴方を待っていた・・」
僕が膝に載っているテイトを見下ろすと、嬉しそうに彼は『ワン』と吠えた。
茜が僕の肩に頭を傾けた。
僕は彼女の肩を抱き、二人と一匹で夜空を見上げた。僕は込み上げて来る涙を止めることが出来なかった。
あの時と同じ満点の星空が僕と茜の再開を祝福してくれている。
でもいつもと違うその星々の姿は、ここが地球から『遠く』離れた異星だと僕達に教えてくれていた。
FIN
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