遥か遠くの星へ

2/2
42人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
加速を開始して十日後、速度は光速の三パーセント、海王星軌道付近を航行していた時だ、突然『ビヨンド』の船体が大きな衝撃で震えた。 僕がコックピットのモニターを見ると、超長距離通信用のパラボラアンテナが損傷していた。多分、高速で塵が衝突したのだろう。しかしこの瞬間、僕のミッションの失敗が決まった。『プロキシマb』に到達出来ても、その探査結果を地球に通信する手段を失ったのだから。 一年後、『ビヨンド』は巡航速度である光速の九九パーセントに達した。周辺の星が全て前方に集まる『星虹(スターボウ)』の中心に向かって『ビヨンド』は地球から遥か『遠く』の別の恒星系を目指している。 この宇宙空間には僕以外の生命は誰も居ない。そして向かっている『プロキシマb』も生命が居る保証は無い。でも生まれた時から孤独だった僕にとって、それは大きな問題でなかった。あの砂浜で見上げた星々にこうやって向かえるのはとても幸せな気分だった・・。 でも、僕の中に一つだけ心の傷があった。それは一瞬夢見た茜との生活を実現出来なかったことだ。でもそれはまた元の自分に戻っただけだ。だから問題無い・・筈・・。 僕の瞳から涙が流れ落ちる・・。 本当の僕の夢は茜との未来だったとその時強く感じていた。でももう彼女とは一生逢うことは無い・・。 僕はその悲しみを噛み締めながら宇宙船の全周に広がる広大な宇宙を見上げていた。 その傍に茜とあのポメラニアン達が居ないことをとても寂しく感じながら。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!