プロポーズ、そして

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浩二は脳腫瘍に脳幹を圧迫され植物状態となってしまっていた。 その腫瘍の位置は脳の深部のため手術が困難で、担当医師からは回復の見込みは無いと宣言された。 しかし僕達は諦めなかった。世界中の大学病院を当たり、やっとアメリカ、デューク大学の世界的な脳外科医ドクター・ノルマンの治療を受けられることになった。アメリカでの長期の治療には数千万円の資金が必要だが、安曇工業の財力で問題なく支払いが出来る筈だった。 しかし、安曇工業のカリスマ経営者である浩二が植物状態になったことで、銀行がいくつかのプロジェクト資金を突然回収し始めたのだ。その結果、安曇工業は運転資金の支払いにも窮することとなり、来月末に百五十億円の支払いが滞れば、会社が倒産してしまう危機を迎えていた。 もちろん、浩二のアメリカでの治療も暗礁に乗り上げていた。 僕は尊敬する浩二の為、そして愛する茜の為にある決心をしていた。
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