遥か遠くの星へ

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遥か遠くの星へ

僕はその十日後、地球の衛星軌道上に居た。 地球から乗って来た『ドラゴン』宇宙船から軌道上に打ち上げられていた『ビヨンド』に乗り換え、核パルスエンジンでの加速の準備に入っていた。 『ビヨンド』は地球から四.二光年離れた『プロキシマ・ケンタウリ』太陽系の『プロキシマb』を目指す。太陽からの放射エネルギーが適切な生命居住可能領域(ハビタブルゾーン)に在る『プロキシマb』は太陽系の近傍で唯一地球外生命が育っている可能性があった。 そこにスペースYが開発した核パルス推進型恒星間宇宙船『ビヨンド』で向かい探査を行うのだ。 『ビヨンド』は1Gの加速を約一年続け、光速の九九パーセントで巡航出来る。加速に〇.九五年、巡行が三.三年、減速が〇.九五年、『プロキシマb』までは船内時間で約五.二年の長い旅だ。 しかし、特殊相対性理論のローレンツ収縮で光に近い速度で飛ぶ宇宙船内の時間は圧縮され、今回の船内時間の五.二年は地球では約四十年の時間が経過することになる。 つまり僕が『プロキシマb』に到達するのは地球時間の四十年後になるし、『ビヨンド』には帰りの燃料が搭載されていないから、僕は地球に戻ることは出来ない。 『プロキシマb』を探査して、そのデーターを地球に送るのが僕の任務だ。孤独なミッションだが、『遠く』の星への旅は僕の子供の頃からの夢だし僕の様な天涯孤独の人間にしか成し得ないミッションだ。 そして愛する茜と尊敬する浩二を助ける『報酬』を得ることが出来る。 「それじゃ、『ビヨンド』行こうか・・。三、二、一、マーク」 僕が核パルスエンジンの点火スイッチを押すと『ビヨンド』が素晴らしい加速度で地球軌道を離れ、『プロキシマ・ケンタウリ』に向かって速度を上げていった。
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