0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
午前中の回診が終わって、もう午後はやることがない。
のろりのろりと流れていく時間と折り合いをつけるのが、長期療養のコツだ。
でも、雨の日は違う。
時間が勝手にかくれんぼする。
忘れてていいよって、かくれんぼする。
目をつむる。
やがて「音」が、雨音とともに現れる。
「優芽」
窓辺に座った小さな「音」は、子供のように見える。
背中に羽のようなものがあって、雨に濡れたら飛べなくなるんじゃないかと心配になる。
「音、来てくれたの?」
「音」はなんでも知っている。子供のように見えるのに、なんでも。
「お誕生日おめでとう」
「知ってたの?」
優芽は驚いて、そう「音」に聞く。
「うん」
優芽は、15歳になった。
高校の制服が、自宅の優芽の部屋に飾ってあることだろう。
でも、それに袖を通す日がこないかもしれないことを、優芽は知っている。
最初のコメントを投稿しよう!