雨 音

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午前中の回診が終わって、もう午後はやることがない。 のろりのろりと流れていく時間と折り合いをつけるのが、長期療養のコツだ。 でも、雨の日は違う。 時間が勝手にかくれんぼする。 忘れてていいよって、かくれんぼする。 目をつむる。 やがて「音」が、雨音とともに現れる。 「優芽」  窓辺に座った小さな「音」は、子供のように見える。  背中に羽のようなものがあって、雨に濡れたら飛べなくなるんじゃないかと心配になる。 「音、来てくれたの?」  「音」はなんでも知っている。子供のように見えるのに、なんでも。 「お誕生日おめでとう」 「知ってたの?」  優芽は驚いて、そう「音」に聞く。 「うん」  優芽は、15歳になった。  高校の制服が、自宅の優芽の部屋に飾ってあることだろう。  でも、それに袖を通す日がこないかもしれないことを、優芽は知っている。
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