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「その……一部屋分の穴ってヤツ……なんか意味、あるのかな……?」
「その意味に当たるのか、どうか分からないけど、ちょっと妙な事があったよ」
「へー……どんな事だ?」
「奥の壁に、穴が一つ、あるんだけどね……」
「なんだ、穴の中に、もう一つ穴があるのか……?」
「あんな大きな穴じゃなくて、覗き穴なんだけどね……そこから妙な物が見えてるんだ……」
「なんだ? 川とか山とかか?」
「いや。それが……東京にある、僕が住んでるマンション……みたいな……」
すると父は、一瞬キョトンとしてから、思わず笑い出し、
「それは絶対に無いぞ!」
「ん。そう。常識的に考えると、そうなんだけど……。それに夕方で、イマイチはっきりしないんだ……。だから明日の昼間、確認してみるよ」
「なんか……ゾクゾクしてきたな……」
父は両肩を抱くようにして言った。
フミヤは、シーンと不気味に静まりかえった空気の中、その二階の穴を見詰めた。
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