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ある少年は、公園で友達と遊んでいた。
ブランコにまたがり、靴を思いっきり前に飛ばす遊びが少年たちの間では流行っていた。
少年の友人が勢いよく靴を飛ばした。
靴は、綺麗な放物線を描いて、はるか遠くへと着地した。
少年も同じように、力いっぱい足を振り出した。
少年の靴はくるくると回転しながら前に飛び出した。
しかし、靴はすぐ目の前に着地すると、ごろごろと痛々しく転がった。
少年の友人たちは、口を大きく開けて笑いだした。
「また、お前の負けだな」
少年は悔しくなり、先ほどよりも力いっぱい靴を飛ばした。
靴は物凄い勢いで飛び出し、空に突き進んだ。
そのまま宇宙まで飛んでいくのではないかと少年は心配したが、靴は何かに吸い寄せられるように勢いをなくし、徐々に地面に引っ張られ始めた。
靴はくるくると回転しながら、少年の目の前に落ちた。
先程よりも大きな笑い声が公園に響いた。
「また、お前の負け」
それから、少年は何度も靴を飛ばしたが、一度も友人より遠くへ飛ばすことはできなかった。
「また、お前の負けだ。じゃあな」
そう言い残して、少年の友人たちは帰っていった。
少年は公園に独りだった。
独りになってからも、少年は靴を飛ばし続けた。
何度繰り返しても、靴は遠くへは飛んでいってくれなかった。
少年は泣き出してしまいそうだった。
少年は公園に取り付けられている時計を見た。
短い針が真下で、長い針は真上にきていた。
空がゆっくりと瞼を閉じていくみたいに、徐々に辺りは暗くなってきていた。
少年は母親から5時までには帰ってきなさいと言われたことを思い出していた。
少年は、もっともっと泣き出してしまいそうになった。
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