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お試し
瑞希にこの店を紹介してくれたのは、店の常連の女の子だった。
お呪いやらパワーストーンやらに凝っていて、パワースポットだの霊的エネルギーだのに一家言持っている子だった。
「何か、お試しで魔法を見せてください」
瑞希が言うと、里香はああ出た出たと言わんばかりにため息を一つ吐いた。
「そう言う事を言うお客様は多いわ。けど、魔法ってそんなにおいそれと見せられるものじゃないのよね」
「でも、二十万って結構な大金だもの。私を信じさせてよ」
一歩も引かぬとばかりに仁王立ちする瑞希をしばらく見つめた後、里香は静かに一度深呼吸してから問いかけた。
「あなた、魔女にはどういうイメージをお持ちかしら?」
「箒で空を飛んで、使い魔がいて、呪文を唱えると人知を超えた現象を起こせる、とか」
「まず放棄で空は飛べない。使い魔って言ったって、一部を除けば生贄用の小動物をそう呼んだのよ。魔法を媒介してくれる存在だから使い魔。後なんだっけ? 呪文は確かに唱えるけれど、それはもう長ったらしいうえに小難しいわけ。ビビデバビデブーではい、ポンとかないから」
豆炭は抗議するかのように、にゃうにゃうと激しく声を上げた。
「はいはい、アンタは生贄にしないから」
そう言って里香は豆炭の頭をぐりぐりと撫でる。
「……何ができるの?」
「そうねぇ。まあ、色々な効果のある薬を作ったり、魔方陣と儀式で、そこそこ時間かけて天気を操ったり? 呪いをかけたり? 悪魔を呼び出したりもできないわけじゃないけど、彼らも気まぐれだから出て来てくれるかどうかは分かんないし、出てきたら出てきたでドエライ事になる。後は水晶玉を通して色々な物を見られるわね」
「水晶玉ならすぐ出来るんじゃないの?」
「でも、仕掛けを疑うんでしょ?」
確かに、と瑞希は頷いた。怪しい小道具なんて、いかにもいかさまの仕掛けがありそうだ。
「じゃあ、私が何かを指定してそれを見せてくれるとか?」
「……それであなたが信じると言うのなら」
信じるわ、と瑞希はきっぱり言った。
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