第一日目

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第一日目

 本庄津波はいきなりの問いにどう答えていいかわからなかった。とりあえず自分がバックアップとやらで生き返る事ができるのはわかった。だけどそうしたところでなんになるのだ。結局は何もかも元どおりでまた絶望的な毎日が繰り返されるのだ。このまま魂が消えるなら消えたっていいと彼女は思った。津波は隣の天使男に「魂を助けてくれたあなたには申し訳ないけど……」と言おうした途端男がこう言って彼女の言葉を遮ったのだった。 「おい、悪いけど早くても遅くてもダメなんだ。今日を入れて七日間ここできっちりどっち選ぶか考えてもらえる?」  ここで七日間過ごす?この自分の部屋で?津波はいずれ帰ってくるであろう両親を見るのが怖かった。確かに魂でしか存在していない自分を両親が見つける事はないだろうが、彼女は両親が自分の死を悲しんでる姿を絶対に見たくなかった。だから彼女は天使男に言った。 「お願い!私を今すぐ消滅させて!それが出来ないなら私をこっから出してよ!お母さんに会いたくないのよ!私の事で泣いてる両親を見たくないのよ!」  津波はもう泣き崩れていた。そんな津波に天使男は言ったのだった。 「心配しなくてもお前は両親に会うことはねえよ。だってここ、お前の部屋じゃねえからな。さっきも言っただろ?ここお前の部屋じゃねえって!」  津波は顔を上げた。そういえばさっきもおんなじこと言ってた。でもここってどっからどう見ても私の部屋じゃん!彼女は天使男に聞いた。 「ここが私の部屋じゃないっていうならここは一体どこなのよ!」  男は一瞬間を置いて答えた。 「ここはね、お前の意識の中」 「意識の中?」 「正確に言えば救出した魂を一時的に保管する空間のことさ。この空間は魂が人間の頃に過ごしていた記憶をそっくりそのまま再現するんだ。いわば巨大なプロジェクターみたいなもんさ。だからお前が両親や友達を見たくないって思えば両親や友達はお前の中に一切出てこない。お前が見たいって思うとこしか出てこないんだ。ちょっと窓から外見ようぜ!」  そう言うと天使男は本庄津波を窓のそばまで連れて行った。津波は窓を見て外の異様な光景に呆然とした。窓の外の透明な空間に学校や図書館と、いつも津波が行ってるマックやコンビニと、そして学校をサボった時にいつもいた公園がただ無秩序に並んでいた。 「こういっちゃ悪いけどお前生きてるとき全然外出なかったのな……。全然スカスカじゃん!他の奴はもっといろいろあるのに……」 「なんなのよこれ!」 「さっきこの世界はお前の記憶を忠実に再現してるって言ったろ?だからお前が普段行ってないようなとこは見えないんだ。だからこんだけしか風景がないってことは……」 「うるさい!人をバカにするな!私だって中学生まではみんなと同じように外で遊んでたんだよ!」
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