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 もうすぐ夜明けだ。夜明けの太陽がこのビルを照らす時私はここから飛び降りるだろう。本庄津波はそうビルの屋上で考えた。もう学校に行く必要もないし、当たり前だけど家に帰ることもない。お父さんとお母さんに最後の挨拶をちゃんと出来なかったのは心残りだけど、もうこの世にいるのは限界だった。お父さん、お母さんゴメンね。もう生きられないよ。  彼女は学校のクラスメイトの事を思い浮かべた。アンタ達の言う通り私死んでやるからね。いつもいつも私を蔑んで嗤ってたアンタ達とも今日でおしまい。アンタ達の事は遺書にたっぷり書いたからあとでちゃんと読んでね。私の言葉の一文字一文字しっかりと心に刻みつけてね!  本庄津波は昨日学校から帰るとすぐにこのビルに忍び込み、それからずっと屋上に隠れていた。時たまこのビルの管理人らしき人が見回りしに来たが、運良くと言っていいかわからないが、まったく見つからなかった。  太陽が登って来て、この十階建ての古ぼけたビルの屋上を照らし出した。今だ!と本庄津波は一歩ずつフェンスに向かっていく。もうすべて終わり。短すぎる人生だった。私なんか生まれるべきじゃなかったんだ。次の人生はもっとましだったらいいな。津波はフェンスを掴んだ。鉄の錆が掌に食い込んでくる。もう終わりこの世界ともさよならだ。  津波は飛び降りる前に下を見た。私はあそこで頭がグチャグチャになって死んでるんだろうな。だけど私の人生はもうグチャグチャなんだからどうでもいい!津波はビルの端から飛び降りようとした時強い向かい風を受けた。なんか体がふわっと浮いた様に感じた。彼女は飛べると思った。そして足に力を入れ背中から地上へ思いっきりジャンプした。  あれ?飛び降りたら恐怖のあまり気をうしなうんじゃなかったの?そう聞いてたけどと津波は異様に冷静に考えた。物凄い加速度で飛び降りてるはずなのになかなか地面に落ちない。津波は突然恐怖を覚えた。このまま死んでもいいのか?私は判断を誤ったのか?やっぱり死ぬんじゃなかった!誰か助けて!生きたいよ!生き……。  彼女は後ろを振り向いて地面を見た。ああ!アスファルトが目の前に!おでこがぶつかっちゃう!  その時だった。本庄津波は突然目が潰れそうな程の強い光を感じたのだった。  本庄津波は意識を取り戻し、体が問題なく動き、痛みも全くなかったのが何故か嬉しかった。そしてゆっくりと瞼を開けてビックリした。そこが天国ではなく自分の部屋だったからである。しかも今まで寝ていたのは自分がいつも寝ているベッドであった。だけど何かが違うような気がする。津波はベッドから体を起こし慌てて自分の部屋を見回した。すると部屋の隅のちゃぶ台にノートパソコンを使ってなにかやっているチェックのYシャツにジーパンを履いた若い男がポツンと座っていた。
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