お前はもう死んでいる?

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お前はもう死んでいる?

 男が天使だと聞いた瞬間、津波は思わず笑ってしまった。男の顔と格好を見てとても天使だと思えなかったからだ。男の顔を見れば見るほどあまりにも天使のイメージと似つかわしくなかった。しかしそれでも男に気を使って笑いを我慢していたが、とうとう堪えきれなくなって馬鹿笑いしてしまった。 「天使だって!自分で天使だって言う人はじめてみたよ!笑ってゴメン!でも笑いが止まらないよ!」 「お前、人のことそんなに笑っていいとおもってるの?」  男は津波の馬鹿笑いに少し呆れて文句を言った。そして続けてこう言った。 「でもお前が笑う気持ちもわかるよ。俺だって人間だった頃は天使なんて羽が生えてる赤ちゃんみたいなもんだと思ってたもの。でも……」 「えっ、人間だった?どういうことそれ?」  津波はびっくりして思わず男に聞いたが、男はなんかめんどくさくなったとかぶりを振ってさっさと話題をそらしてしまった。 「と、とにかくだな。今のお前の状況を簡単に話すとな。ほらコイツを見てみ」  と言って津波にノートパソコンの画面を見せた。さっきも見た画面だ。 「さっきもちょこっと話したけどここに名前がずらりと並んだるだろ?これが全員自殺をしようとした人間なんだ。殆どがご覧の通り真っ白でなにも塗られていない。なんでかわかるか?」  確かに画面のリストはほとんど真っ白だ。赤く色が塗られているのは津波の列だけだった。もしかしたらこれは自殺を知らせる危険信号みたいなものだと彼女は考えた。この赤字の列を見て男は……。津波は男に言った。 「もしかしてあなた!自殺しようとした私を見つけて天国から私を助けに飛んできたの?私アスファルトに落ちようとした寸前目が潰れちゃうぐらい眩しい光を浴びたの!あれあなただったんだ!」  本庄津波は男を複雑な気持ちでみた。この男に感謝すべきか、余計なことをしてと呪うべきかわからなくなった。私は助かった。だけど……。津波は明日からの毎日を想像して絶望した。明日からまた学校に行かなくちゃいけない。そしてまたあの連中に虐められるんだ。無視されて笑われてスマホパクられてそれで……一人ぼっちにさえなれないほど追い詰められて……。  急に津波は自分を助けた自称天使に怒りが湧いてきた。もうあんな毎日が嫌だったから自殺したのになんでこうなるのよ! 「なんで私を助けたのよ!余計なことしなけりゃよかったのに!私は死にたいんだから今すぐ殺してよ!もう一度あのビルから突き落としてよ!」  そう言いながら津波は天使もどきの男の両肩を思いっきり揺らした。天使もどきの男は彼女のされるがままになっている。やがて天使もどきは彼女の両手を掴んだ。そして息を喘がせながらこう言った。 「わかんねえ女だな!さっきから死にたいとか言ったり、死にたくねえとか言ったり!てか俺の説明ちゃんと最後まで聞けよ!」 「うるさい!ガタガタ言わないでさっさと私を殺せよ!」 「ガタガタ言うなぁ?あのなぁ!俺がわざわざ突き落とさなくたってお前はもう死んでるんだよ!」 「はぁ?」    
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