俺の仕事

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俺の仕事

「魂だけ?それだけ救ってなんの意味があるの?体がバラバラになったら元の体に戻れないじゃん!それに魂って体と一緒に死んじゃうもんなの?大体魂だけ救ってあなたなにしようとしてるのよ!」  津波は男に矢継ぎ早に質問を続ける。自分がこれからどうされるのか不安になってきたのだ。私絶対天国に行けないだろうな。行くとしたら地獄なのかな。でも……神様私辛かったんだよ!この世に生まれた事を何度も恨んだ事だってあったんだから……。  しばらくして男が口を開いた。 「そういっぺんに聞かれたんじゃこっちだってどれから答えていいかわかんねえよ!さっき一から詳しく説明してやろうとしたのにオマエが妙な事言いだすからわけわかんなくなっちまった。とりあえずオマエの今の状況とこれからのことについて説明してやっから、説明する前に約束してくれ!」  そう言うと男は津波を指しながら一言一言区切るように言った。 「」  彼女はゆっくりうなずいた。  男は津波にノートパソコンの画面を見せながら話を始めた。 「まぁ、まず最初に見せたリスト見ながら話すか。おや、また追加されてきたな。見てみろよいつの間にかお前上から五番目になってるぜ!」 「ホントだ」 「こんな風にこのリストは人が自殺しようとすると常時更新されてくんだ。だけど新しく入ってきたリストってお前の列みたいに色なんか塗られてないだろ?だから俺らの出番はなし。なんでかわかるか?」 「わからない」 「だろうな。自殺の状況しか書かれてないもんな。なんも色が塗られてねえって事は自殺はしたけど死にきれなかったとか、誰かに助けられて今のところ命に別状ないってことなんだ。わかる?」  男の説明を聞いて津波はなんとなくわかってきた。何故自分のところだけ赤く色が塗られていたか、そして何故この自称天使の出来損ないが自分を助けに来たか。津波はさっき話に割り込むなと男に言われていたけど自分の答えを言いたくてたまらなかった。 「あ、あの!話に割り込むなって約束したけどちょっとだけいい?」 「オマエもしかしてわかったの?」 「全部じゃないかもしれないけど、なんとなく」 「じゃあ、言ってみて!」 「あの、私も全部はわからないけど、今の説明聞いてなんか見えてきたの。最初私の列だけ塗られていて、もしかしたらSOSの信号みたいなものであなたがそれを見て助けに来てくれたものだと勘違いしたけど、実はその逆だったんだね。もう助からないから赤だったんだ……。でもなんで魂だけは助けたの?なんで死んだ私が自分の部屋にいるの?他にもいろいろわからない事がたくさんあるよ!お願い!大人しくしてるから私に全部話して!」 「お前結構感良いんだな。まあ大体は合ってるよ。とりあえずお前はそんな状況になってる。ついでに言っとくけどなんで俺らが助ける必要のない人間がこのリストの中に入ってるかって言うとそれはコイツらが近いうちにまた自殺するか、あるいは容態が急変するかもしれないからさ。そしたら俺らの出番だしね。さて、本題に戻りますか」  そこまで言うと男は一息ついた。そしてすぐに話を再開した。 「で、さっきも言ったよな!お前を助けたのは仕事だからって!だから今から俺が話すことは1。そして今から俺が言うことを真剣に考えて欲しい」  本庄津波は男の異様なくらい真剣な表情に一瞬たじろいだが、やがて意識を集中させて男の話を聞いた。 「俺らがなんでお前らみたいな自殺者を助けるかっていうと、実は天国の事務処理の都合なんだ。自殺者の増加は天国でも前から大問題になってたんだ。自殺した人間の魂は地上で見つけ次第自殺管理局で適切に廃棄処分されるんだけど……」 「ちょっと待って!廃棄処分て!」 「悪りい!ちょっと口が滑った!今のは忘れてくれ!」  男の慌てぶりから見ていて津波は今男が言った事実に心の底からゾッとした。津波は声を震わせながら言った。 「私大丈夫だよ。お願い!話を全部聞かせて!」 「わかってる。お前がどうなるか全部話すよ。てか全部話さなきゃいけないんだけどな。これ俺の仕事だし!」
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