【好きだよ、と】

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「うっ……く、くるしい、いなさんっ」 「我慢しろ。……ははっ、そうか。そんなに面倒か、俺は」 「あっ……、お、怒ります……?」 「まあ、普段なら怒るところだが……今日だけ特別に、許してやる」  笑いながらそう言うと、桜は怪訝な顔をして首を傾げた。どうして俺がこんなことでこれほど喜んでいるのか、きっと分かっていないのだろう。俺自身、はっきりとした理由は分からないのだから無理もない。  ただ、今までの俺のすべてを受け入れてもらえたような、俺の駄目なところまで許してもらえたような気がしたのだ。この小さな体は、面倒で複雑な俺の何もかもを受けとめてくれる、初めての存在だった。 「……なあ。もう、入りたい」 「は、えっ!? は、はいりたいって、どこにっ」 「お前の中に決まってるだろ。言わせんな」 「え、も、もう!? でもまだっ、その、準備がっ……!」 「悪いが、今日は待てない。ほら、さっさと脱げ」  いつも以上に性急な俺の態度に怯えたのか、桜が顔を引き攣らせながら腕の中でもがく。  しかし、その細い腕で俺の力に敵うはずもなく、下に履いていた部屋着も下着も難なく取り払うことができた。  そして、いささか余裕の無い動きで秘裂に指を這わせると、十分とは言えないもののそこはしっかりと湿り気を帯びている。 「……意外と濡れてるな」 「っ……! だ、だって、伊奈さんがいっぱいキスするからっ……!」 「けど、ちょっときついだろうな。桜、自分で入れてみろ」  今すぐにでも中に押し入ってしまいたい気持ちをぐっとこらえて、全裸になった桜の腰を抱えて俺の体を跨がせる。  状況をよく分かっていない様子の桜を後目に、俺はベルトを外してスーツのズボンを脱ぎ捨てた。 「え、伊奈さん……? あの、私は、どうすれば……っ」 「だから、自分でコレ入れてみろって。ゆっくりでいいから」 「えっ!? や、むっ、無理です! そんなのできないっ……!」 「あっそ。それなら、今すぐ腰引っ掴んで逃げられないようにして奥まで一気に突っ込むけど、いいか」  脅すようにまくしたてると、桜は青ざめた顔でふるふると首を横に振った。  いきなり奥まで貫かれるのは怖いのだと言っていたから、想像しただけで怯えているのだろう。しかし、俺の方もなかなか限界が近い。 「ほら、どうした? できないなら……」 「でっ、できます! できるけど、あの、伊奈さん……? あの、あれ、持ってますか……?」 「あれ?」 「そのっ……ひ、ひにん、するやつ……」  ちょっと可哀想になるくらい顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに桜がそう口にした。  その姿にますます興奮を覚えてしまったが、そんな素振りは見せないようにして、赤くなった耳元でそっと囁く。 「責任は取るつもりでいるが、嫌か?」 「えっ……!? え、え、い、いなさんっ、つけないつもりでっ……!?」 「ああ。でも、お前が不安なら今日はしない。つけろって言われても、そもそも今持ってないからな」  苦笑しながら正直に言うと、桜は口をぱくぱくさせながら俺の瞳をじっと見つめた。  これで嫌だと言われたら、仕方ないが今日のところは我慢するしかない。責任を取るつもりでいるというのは本当だが、何もこいつを不安にさせてまで抱きたいわけではないのだ。まあ、できることなら今すぐ抱いてしまいたいというのが本心ではあるが。  少しの間、桜はじっと俺を見つめたまま何も言わなかった。その瞳は明らかに動揺していて、心なしか唇も震えている。  まだ早かったか。  そう思って、今日はやめておくかと切り出そうとしたのと同時に、桜の小さな手のひらが存在を主張している俺自身にそっと触れた。 「な……っ、どうした」 「あ、あの、ゆっくり、でいいんですよねっ……? 私がいいって言うまで、動かないでくださいねっ」  釘を刺すようにぴしゃりとそう言うと、桜が慣れない手つきで俺自身を軽く撫でた。  我慢していたせいか、それだけの刺激で思わず声が漏れそうになって、慌てて口を引き結ぶ。 「おいっ……、俺から言っておいて何だが、いいのか?」 「だ、だって、嬉しかったからっ……、それに、伊奈さんとの赤ちゃんできたらどんなかなぁって想像したら、なんだか幸せな気持ちになっちゃって」 「……そこまで妄想してたのか」 「す、すみません……妄想するの、得意なもので」  そう言って本当に幸せそうに桜が笑うから、つられて俺まで笑ってしまった。  うまく言葉にはできないけれど、こいつの傍にいるといつもこんな優しい空気が流れているような気がする。  愛華にちんちくりんだと罵倒されたと嘆いていたが、今ではそんな桜が何よりも大きな存在になっていた。 「あ、あの、へたくそでも、怒らないでくださいね」 「怒らない。ただ、できれば早くしてくれ。暴走しそうだ」 「ひっ……、は、はい」  恐る恐る、といった様子で、俺の両肩に手を置いて腰を上げる。  入れやすいように自分で昂ぶった一物に手を添えて固定すると、その先端に向けて桜がゆっくりと腰を下ろしていった。くちゅ、と微かな水音が響く。 「んっ……! ん、は、はいるっ……?」 「っ、ああ……痛くないか」 「は、はい、だいじょうぶっ……っあ、ああっ」  少しずつ、俺自身が体内に埋め込まれていく。焦らされているようにも感じるくらいその動きはゆっくりで、思わず自ら腰を振りたくなる衝動を必死でこらえた。  そして、ようやくすべて収まりきった頃には、俺も桜も全身汗だくになっていた。 「あ、んん、はいっ、た……?」 「はぁっ……、あー、やっと、な……」 「ん……っ、あ、伊奈さん、シャツ、暑そう……」 「ああ、そうだな。脱がせてくれ」  汗でびっしょりになってしまったワイシャツに気付いて、桜がぎこちない手つきでボタンを外してくれる。  そして、インナーもすべて取り払ってから、同じように汗の滲んだ桜の体を抱き寄せた。素肌同士が触れ合う感触が心地いい。
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