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後日談・さあ、一緒に励みましょう
薄い浴衣の裾から、彼の大きくて温かい手のひらがそっと差し込まれる。その手のひらはそのままさらさらと私の肌を撫で、ゆっくりではあるけれど着実に中心へと向かっていく。
普段ならばこのまま彼に何もかも任せてしまうところだが、ふと脳裏に蘇った“あること”に突き動かされて、私は彼の胸をぐいっと押し返した。
「しゅ、周一郎さん! 今日は、折り入ってお願いがあるんですっ!」
「……あ?」
すっかりやる気満々になっていたところを止められて、周一郎さんがあからさまに不満気な声を漏らす。その責めるような視線に怖気づきそうになるのをぐっと堪えながら、私は勇気を振り絞って彼にあるお願いをした。
「きょっ、今日は、そのっ……わ、私に、リードさせてくださいっ!」
思ったよりも大きな声が出てしまって、自分自身でその声に驚く。でも、驚いたのは彼も同じだったようだ。切れ長の目を真ん丸にして、「本気か」とでも言いたげに私の顔を窺っている。
そもそも、私がどうしてそんな発言をするに至ったのか。まずはそこから説明することにしよう。
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