後日談・さあ、一緒に励みましょう

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「……ということで、この温泉旅行を利用して周一郎さんをメロメロにさせちゃおうって思ったんです! だから今日は私に任せてください! そっ、その、気持ちよくしますからっ!」 「待て待て待て。突っ込みどころが満載だぞ」 「えっ……だ、駄目ですか?」 「駄目というか……バカ正直にいきさつを話してくれたのはお前らしいが、あれか? お前は俺が浮気すると思ってるのか」 「そ、そういうわけじゃないんですけど……やっぱり、心配になっちゃうんです。周一郎さん、かっこいいから」  尻すぼみになりながらそう言うと、周一郎さんはくくっと苦笑いした。どうやら私の気持ちは分かってもらえたようだが、あまり真剣には捉えていないらしい。私の方は割と切実なのに。 「分かったよ。そこまで言うなら、お前の好きにさせてやる」 「あ、ありがとうございます! それじゃあ手始めに、その、えーっと……ご、ご奉仕? させてくださいっ!」 「……は?」  怪訝な声を上げる周一郎さんに構わず、私は早速あぐらをかいて座っている彼の股座に手を伸ばした。先ほど少しだけ触れ合ったせいで裾が捲れたままだから、あとは下着を取り払ってしまえばいいだけだ。  ──いや。そういえば、参考にと思って買った雑誌の記事には、直接触る前に布越しに触れて少し焦らした方がいいと書いてあった。それならとりあえず下着の上から様子を探ってみようと思って、やや頭を持ち上げている彼自身にそっと触れてみる。 「うっ……おいっ、ご奉仕ってなんだよ!? どこでそんなの覚えた!?」 「え……あの、雑誌で見て……」 「お前、いつの間にそんなもん……っ、あ、ばか、触んな……っ!」  慣れない手つきでさわさわと自身を揉んでみると、案外簡単にそれは硬く立ち上がった。これなら、頑張れば私の手で彼をイかせられるかもしれない。  少しだけ自信が沸いた私は、ごくりと唾を飲み込んでから彼の履いていた下着を脱がせることにした。勃起したせいで下着を履いたままでは苦しそうだったし、直接見てみないとどこを触ればいいのかよく分からないのだ。 「ひっ……た、たってる……」 「お前が勃たせたんだろうが! ああもう、そんな顔するならやめろ! いつも通りに俺が……」 「だっ、だめです! いつも通りじゃダメなんですっ! が、がんばりますからっ」  自分で下着を脱がせたくせに、眼前に現れたその陰茎に思わず顔を引き攣らせてしまった。慌てた様子の周一郎さんが私を止めようとしたけれど、ここまで来たからにはもう引き下がれない。私の手で彼を気持ちよくさせて、身も心も私のものにしたいのだ。 「え、えっと……こんな感じ……?」 「っ……! なあ、まさかお前、ちゃんと触ったことないのか……?」 「うっ……ご、ごめんなさいっ、不勉強でっ」 「謝るなよ。ふっ、そうか……っ、じゃあ、俺ので勉強しろ」  なぜだか急に周一郎さんが乗り気になってくれて、たどたどしい私の手つきを黙ってじっと見つめている。理由は分からないけれど、抵抗されたら適わないのは百も承知なので、私としてはありがたいことだ。  早速彼の表情を観察しながら手を動かして、どこが感じるのか探ってみることにする。指先だけで全体をなぞってもあまり反応は無かったけれど、先端のくびれた部分に優しく指を這わせたら、びくっと彼の体が小さく跳ねた。 「あ……これ、気持ちいい……?」 「っ、ああ……でも、あんまり焦らすなっ……、全部、握ってくれ」 「えっ? こ、こう……?」  言われた通り、指先だけでなく手のひら全体で自身を包み込む。余計に彼自身の熱さや大きさを感じてしまって恥ずかしくなったけれど、そのまま少し動かすと気持ちよさそうに顔が歪んだから、手を離さずに竿の部分を強めに擦り上げてみた。 「ぅ、あっ……! っ、く、お前のも、触らせろっ……!」 「えっ!? ま、まだダメですっ! 触られたら、訳わかんなくなっちゃうっ」 「じゃあ、胸だけでいいから……っ! くそっ、好きにしろなんて言うんじゃなかった……!」  なにやら小さく叫んだかと思うと、周一郎さんははだけかかっていた私の浴衣の袷に躊躇なく手を突っ込んだ。そして難なく胸の先端を探り当てて、そこを指先でくりくりと摘み上げる。 「ひゃっ、んんぅっ! だっ、だめぇ、今日は私がするのっ……!」 「っ、だから、好きにさせてんだろっ……! これくらい許せ!」 「で、でもっ……、あっ、だめ、舐めるのは……っ!」  荒い吐息を零しながら身を屈めたかと思うと、周一郎さんは私の胸元に顔を埋めて乳首を舐めあげた。彼との情事でその刺激にすっかり弱くなった私は、辛うじて陰茎を握りながらもその動きを止めてしまう。 「ひ、やぁっ! しゅぅ、さんっ、だめっ……! だめなのっ、それされたらっ、何もできなくなっちゃうっ……!」 「はぁっ……、なんだ、もう終わりかっ……? 手ぇ止まってるぞ」 「だ、だって、周一郎さんが余計なことするからぁっ……! あっ、んんっ! やぁ、吸っちゃ……っ」 「これ以上できないなら、もういいだろ? っ、もう、いつもみたいに……」 「あっ、だめっ! できるっ、できるから、もうちょっとだけ……っ」  もう諦めて全部周一郎さんに任せてしまえばいいのに、私は妙な意地を張っていた。今日は彼を気持ちよくさせるつもりだったのに、これではいつも通り私が気持ちよくしてもらうだけになってしまう。  しつこく舌先で乳首を舐めている周一郎さんの体をなんとか引き剥がして、乱れた息も整わないまま、握りしめた彼自身の先端をぱくっと咥え込んだ。 「なっ……!? ば、バカ! そんなことまでしなくていいっ!」 「ん、やあっ! おねがいっ、気持ちよくしたいのっ……! や、優しくしますからっ」 「そういう問題じゃ……! っ、あ、ぐっ……!」  思い切って咥えてみたのはいいものの、その後のことなんてさっぱり考えていなかった。どうしよう、と一物を口にしたまま少し考えて、とりあえず先端の小さな割れ目を舌先でなぞってみる。  すると面白いくらい周一郎さんの体が強張るのが分かったから、私はなんだか嬉しくなって何度もその動きを繰り返した。 「はぁっ、くっ……! おまえ、後で覚えてろよ……っ」 「ん、えぇ……っ? んっ、気持ちよく、ないですか……?」 「っ……、悪くは、ないが……っ、複雑だ……」  不安げに彼の顔を窺うと、その頬は紅潮していつも以上に色気を漂わせていた。悔しそうに言葉を詰まらせているところを見ると、彼も興奮してくれているらしい。 「よかったぁ……! んっ、ふ、あの、もっと頑張るので、イってくださいっ」 「なっ……それは却下だ! っ、もう満足しただろ!? もう、離せ……っ」 「いやです! 今日は私が周一郎さんをひいひい言わせて、『桜じゃないと駄目だ』って思い知らせるんですから!」 「はあっ!? ひいひいって、お前っ……、調子に乗るのもいい加減に……!」 「周一郎さん、気持ちいいんでしょう……っ? だったらつべこべ言わないで、黙ってイってください!」  嬉しさのあまり俄然やる気が出てきた私は、つい調子に乗ってそんな発言をしてしまった。いつも彼にされるがままの私にとっては、周一郎さんをこの手で喘がせているという今の状況がとてつもなく甘美なものに思えたのだ。
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