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しかし、その私の言葉で周一郎さんの目つきが変わる。
彼は驚いたように目を剥いた直後、私の体を無理やり引き剥がして布団の上に押し倒した。つい先ほどまで快感に喘いでいた瞳が、今度は睨みつけるように私を見下ろしている。
「きゃあっ! しゅ、周一郎さんっ……?」
「……あのなあ。張り切るのはいいが、的がずれすぎだろ。イかせられたら、俺がお前の虜になるとでも思ってるのか?」
「え……ち、違うんですか……?」
「そこまで単純じゃねえよ。舐められたもんだな、俺も」
「たっ、確かに、舐めましたけどっ」
「そういう意味じゃない! はあ、もう……面倒な嫁さんもらっちまったな」
心底めんどくさそうに言われてしまって、私は調子に乗っていたことも忘れて縮こまった。
そんなことを言われたって、私には彼を繋ぎとめる方法が分からなかったのだ。それでも私の傍から彼が離れてしまうことを避けたくて、だからこそこうして行動に移した。でも、そんな私の行動は的外れだったらしい。
「……ごめん、なさい」
「ああ、反省しろ。少しでも俺の気持ちを疑ったんだからな」
「え……そこ、ですか? あの、周一郎さんのを強引に舐めたことじゃなくて?」
「それはっ……! っ、まあ、悪い気はしなかった。だけど、お前にしてやられてばっかりじゃ嫌なんだよ。……こういう時くらい、俺に良い格好させろ」
「こ、こういう時って……っ、えっ、ひゃあっ!?」
するりと浴衣の中に入り込んだ周一郎さんの指が、つうっと私の陰部を下着越しになぞった。すっかり気を抜いていたせいで足を閉じることもできなくて、彼の指先に何度も割れ目を擦られる。
「……なんだ、濡れてんな。俺の咥えただけで興奮してたのか?」
「ひっ、ぃやっ……! んっ、だ、だって……っ」
「だって、じゃねえだろ? ほら、言えよ。旦那のちんぽ舐めただけで濡らすくらい興奮してました、って」
「ちんっ……!? やっ、やだやだやだ! そんな変態みたいなこと言えませんっ!」
「あっそ。まあ、俺は無理やり言わせるつもりは無いが……それでいいんだな?」
確認するように、周一郎さんが私の瞳を覗き込む。試すようなその視線と、にやりと弧を描いている口元を見れば、彼がただの意地悪でそんなことを言っていることくらいすぐに分かった。でも、だからといって簡単に口に出せる台詞ではない。
「いっ、言えないっ……」
「へえ? じゃあ、どうしてこんなにびちゃびちゃになってんだよ。ああ、俺の舐めながら他の男に抱かれる想像でもしてたのか」
「ち、違います! そんなのしませんっ、周一郎さんだけがいいっ……!」
「それなら言えるだろ? なあ、こんな奥までどろっどろにして……ははっ、布団まで垂れてきたぞ」
「ぅあっ、や、やだっ! んんぅっ、あっ、ひどいっ、こんなの……っ」
耳を塞ぎたくなるような恥ずかしい言葉を吹き込まれて、陰部からさらに愛液が溢れ出すのが自分でも分かった。それを掻き出すかのように周一郎さんの長い指で擦られているから、彼の言う通り膣内はどろどろになっている。
「もう、いやぁっ……! 謝るっ、謝りますからっ、も、いつもみたいに、してぇっ……!」
「駄目だ。いつも通りじゃ嫌だって、お前が言ったんだからな」
「い、いったけどっ、やだ……っ、意地悪しないでくださいっ、ひぃっ、あ、いくっ、いっちゃうっ!」
「イくのも駄目だ。なんでこんなに濡らしてんのか言えるまでイかせないし、俺のも挿れてやらないからな」
──鬼だ。
普段から厳しいところがあるのは知っていたけれど、今日の周一郎さんは五割増しで鬼畜だった。
それなのに、蜜穴を抜き差しする指の動きは決して雑ではなくて、私の気持ちいいところを時折優しく撫で上げてくれる。そして私が果てる寸前にぴたりとその動きを止めてしまうから、それがもどかしくてたまらない。
「はぁっ、あんっ……いき、たいっ、しゅう、いちろ、さん……っ、いきたいの、いかせてっ……!」
「っ……、なんだ、もう我慢できないのか。どうやってイきたい?」
「んぅ、えっ……? は、あぁっ、しゅ、さんので、いきたい……っ」
「へえ。じゃあ、さっきの台詞言ってみろよ。言えたら、いつもみたいに気持ちよくしてやる」
言いながら、周一郎さんが私の体内からぬぷっと指を引き抜く。そして、物足りなさでひくつく入口に自らの一物をそっと宛がった。そのまま入れてほしくて目で訴えたけれど、彼はふっと笑うだけで私の望みを聞いてはくれない。やっぱり、彼はとことん意地悪するつもりらしい。
「すごいな、お前のここ。濡れまくってるし、こっちもびんびんで硬くなってる」
「や、ぁっ……! あっ、んんっ」
「ほら、桜。イかせてほしいんだろ? 言えって」
ぎりぎり達することができないくらいの強さで、周一郎さんが親指の腹で花芽を押し潰す。さらに見せびらかすように熱い彼の先端を入口に擦りつけられて、私はもう彼に気持ちよくしてもらうことしか考えられなくなっていた。
彼のものが、欲しくて欲しくてたまらない。早く一つに溶け合ってしまいたい。
その欲求だけに駆られて、私はゆっくりと口を開いた。
「しゅ……周一郎さんの、ち、ちんぽっ、なめたら、興奮してっ……、それで、濡らしちゃいましたっ……!」
「っ……、それで?」
「そ、それでっ……? え、えっと、それで、ほしくなっちゃったんですっ……、いつもみたいに、私の中ぐちゅぐちゅにかきまわしてっ、いっぱいいかせて……っ!」
もう、恥なんかどこかへ置いてきてしまったようだった。そんなことよりも早く周一郎さんに貫いてほしくて、何も考えられないまま彼にねだった。
そんな私の言葉に返事をするかのように、間髪入れずに周一郎さん自身がようやく体内に埋め込まれる。思わず息を止めてしまうほどそれは熱くて、やっと繋がることができた喜びで全身が震えた。
「っ、はぁっ……! お前、そういうのどこで覚えてくるんだよっ……!」
「うあっ、あ、えっ……? わかん、なっ……、あぁんっ、きもち、いっ……」
「はあ……結局、お前にしてやられたな……っ、いっつもそうだ」
「ん……っ、しゅぅ、さ、おこってる……?」
「怒ってない。もう、何も考えなくていいから、お前は気持ちよくなってろっ……!」
その言葉とともに、がつん、と最奥を彼のもので穿たれる。その衝撃の強さに声も出ないほど感じて、私は助けを求めるように彼の背に腕を回してしがみついた。
「あっ、ああっ! やぁっ、ん、すごいぃっ……!」
「は……っ、気持ちいいか? さくらっ……」
「ん、きもちいっ、すごいっきもちいいのっ……、んぅっ、も、いきそうっ、いっちゃうっ!」
「ああっ……、お前、よく頑張ってるからな。好きなだけイけよ」
「んっ、ぅんっ……! ひ、ああっ、すきっ、周一郎さんっ、すき、あっ、ああっ──……!」
一番感じる場所を擦り上げられて、私は体を痙攣させながら達してしまう。目を瞑りながらようやく訪れた絶頂の余韻に浸っていたかったのに、周一郎さんはおかまいなしで再び腰を打ち付けはじめた。
「はぁっ、んぅ、うぅ──っ! やっやだぁ、まって、いったばっかりだからぁっ……!」
「はっ、なんだよ? いっぱいイかせてって、さっき言ったくせに……っ」
「言った、けど……っ、だめっ、す、すぐいっちゃうぅっ……! あっ、あ──っ!」
まだ震えが止まらないうちに、またも絶頂に達してしまった。もう息も絶え絶えな中で、責めるように周一郎さんを精いっぱい睨みつける。私がそうしたところで彼は痛くも痒くもないんだろうけど、ちょっとは反抗しないと気が済まないのだ。
「どうした? もう中に出してほしいのか」
「っ、ち、ちが……っ」
「なんだ。可愛い顔して見つめてくるから、強請られてんのかと思った」
そんな甘い囁きとともに優しく口づけられたら、彼に意地悪されたことも忘れてときめいてしまった。
とろんとした目で彼を見つめる姿は、きっと端から見たらさぞかし滑稽なことだろう。でも、そんな私でも周一郎さんが「可愛い」と言ってくれるならそれでいい。いくらバカだと言われても、彼のくれるすべての言葉に愛情がこもっていることを私は知っているのだ。
「……なあ。そういえばお前、子どもは何人欲しい?」
「え……っ? ん、こども……? あっ、んんっ」
「ああ。計画通りに行く訳ないとは思うが、一応希望を聞いておこうと思ってな」
今度はゆっくりとした動きで私の中を責め立てながら、周一郎さんが突然そんなことを聞いてきた。
こんな頭がぼうっとした状態なのに聞かないでほしいと思いつつ、どうにかこうにか脳内で未来を想像して答えを返す。
「えっと、あの……できるだけ、たくさん……?」
自然と頭に浮かんだのは、たくさんの家族に囲まれて過ごす私たちの姿だった。
駆け回る小さな子どもたちを追いかける周一郎さんに、そんな彼らを笑顔で見つめる私。その光景は、少し想像しただけで私を笑顔にさせた。
彼の言う通り、何もかも希望通りにいくだなんて思ってはいないけれど、騒がしくも笑い声の絶えない家族になりたいというのは私の本心だった。
「ふふっ、そうか。……それじゃあ、なおさら頑張らないとな」
周一郎さんは、そんな私の願いを否定することなく笑って受け止めてくれた。目を細めて薄く笑い、汗で濡れた私の額を柔らかく撫でてくれる。
結局、なんだかんだ言って周一郎さんはやっぱり優しい人なのだと思う。そんな彼が私を放って他の人に走ってしまうなんて、よく考えてみれば天地がひっくり返ってもあり得ないことだった。
自分の取り越し苦労を今さら自覚して、覆い被さる彼の体をぎゅっと抱きしめる。そして何度も甘い口づけを交わしながら、幸せな温かさが体内に満ちていくのを感じていた。
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