後日談・あなたは私の大切な

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 テレビであの日のロケが放送されてから、以前よりもお客さんが少し増えた気がする。テレビを見てきました、という若いお客さんもいて、良い宣伝になったのは確かだろう。  それ自体はありがたいことなのだが、私と伊奈さんは新たな悩みを抱えていた。 「おっ、今日は桜ちゃんが店番か! 見たぞー、この前のテレビ! アツアツっぷり見せつけちゃってさー!」 「あ、あはは……小林さん、それ言うと周一郎さんが怒りますよ」 「え? 何言ってんだよ周ちゃん、『俺の愛しい妻ですぅ~』なんて紹介してたじゃないか!」 「そんな言い方はしてない!! まったくもう、商店街のおっさんたちめ、こぞって冷やかしてきやがって……!」 「おいおい、聞こえてるぞ周ちゃん!」  テレビ放送の直後から始まった常連さんのイジリに、伊奈さんはその都度怒って反論していた。そして私の方は、そんな彼をなだめるという仕事が加わってしまったのだが、これも一つの幸せということにしておこう。
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