希望の職種は公務員

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「大変お待たせしました」  平身低頭のセーファスと、いじけた態度のホイットニーが面談室へと戻る。 「大丈夫……ですか?」 「大丈夫ではないに決まっておろう……」  如月の問いにホイットニーはそう答えるが、 「すみません。この人はそう言ってますが問題はありませんので。話の続きを聞かせてもらえませんか?」  セーファスはホイットニーを無視してそう告げ、如月の顔をまっすぐ見つめた。 「新しい父親は私に色目を使い、身体を触ってきました。私は嫌だったけど、声はあげられなかった。そして中学校を卒業した日、ついには私に体の関係を強要しようとしたんです」 「そんなの、許されるわけがないでしょう?お母さんは?相談にも乗ってくれなかったんですか?」 「はい。完全に見て見ぬふりでした」 「そんな……」 「私は全力で家から逃げ出し、繁華街へと逃げ込みました。そこで出会ったオーナーに拾われたんです。住む場所と、体の関係と引き換えでした」 「えっ?でも未成年者とそういう関係になるのはこの星では法律で……」 「仕方ないじゃないですか!これしか私には生きる方法がなかったんだから!私が母親、いや、あんなの母親なんかじゃない。あの女と、あの男から逃げるには、これしか方法がなかったんです。もっと強い立場を手に入れないと、私には生きていくことはできないんです。仕事の中身なんてどうでもいい。安定した収入と社会的身分。これさえあれば私は幸せになれるんです」  悲痛な声を絞り出す如月を前にセーファスはついに紡ぐ言葉を失い、面談室の中に重い重い沈黙が再び流れる。そのとき、 「公務員、なってみるかの?」  突如、ホイットニーが口を開いた。
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