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☆ ☆ ☆
同時刻。
アメリカ・ネバタ州南部の半砂漠地帯。
この地には、アメリカ政府が2013年までその存在を公式には認めていなかった軍の秘密基地エリア51がある。
UFOマニアたちの間では、「ロズウェル事件で回収したUFOの残がいとエイリアンの死体は、最終的にここに輸送されたにちがいない」というウワサがまことしやかに流れていた。
その秘密基地の内部で、今まさに大事件が起きようとしていた。
「カーター博士。何をそんなに心配そうにしているのですか?」
助手の若い女性が、銀色の宇宙船を見上げているカーター博士にそうたずねていた。
カーター博士は、アメリカ軍から宇宙戦闘機の開発を任されている天才学者である。20年前に亡くなった父親も、宇宙船の開発に関わっていた。
これまでに、カーター博士と父は、ロズウェル事件で回収した宇宙船の残がいを調べ、その技術を取り入れてきた。おかげで、アメリカはアポロ計画で有人宇宙船を月へ降り立たせることに成功したのである。
だが、天才であるカーター博士がいくら頭をひねっても、エイリアンが乗っていた宇宙船のシステムや秘密をすべて解き明かすことは不可能だった。
そもそも、宇宙船のボディとなるこの『ロズウェルの聖杯』とは、どこで採取できる物質なのか?
アメリカ軍は、ロズウェル上空で戦闘におよんでいた2種類の宇宙船の残がいを回収した。敵味方同士だったのに、どちらの宇宙船も同じ「銀色の形状記憶合金」を部品に使っていた。
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