シンプルな答え

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シンプルな答え

「ダーツを投げる理由なんて考えてみたら、俺だって…あれ?って、しょっちゅうだと思うよ??さっきの悩み…ネンジくんにも話した?」 思わず出た言葉に、迷いながらも投げた矢は真ん中のブルを外す。 「…話したよ…てか、LINEでね…でも、それについて具体的な返事とか話にはならなかったかな…」 そう呟きながら、1投1投を集中しながらも投げる若にゃんだったが…ダーツの矢は正直だ…ブルを外す。 「大切な人であればあるほど、真剣な話のLINEとかって、返す言葉に悩んで考えちゃうもんだよ…さすがに、ネンジくんも」 気休めのような事を良いながら、俺は投げ返した。 キャッチボールのように、互いに会話をしながらダーツを投げ合う…若にゃんのターンになったのに、返事がない。 そもそも会話しながらダーツを投げ合わなければいけない訳ではないのだが、急に黙られると何かしら言葉の選択をミスってしまったのでは!?と考えてしまう。そりゃあ、集中してただけとかあるかもしれないが…今は、そんな感じで会話が途切れた訳ではない事ぐらい俺でも感じる。 今までなら、そんな空気感とか気にしなかった俺だが…オバハンの影響なのか、妙に気になる…なんだか、まるでオバハンはダーツを辞めてしまうのでは…なんて感じがしたからだ…あんなにハウスでも楽しそうにして、今度は優勝だとかって意気込んでたのに…急に矢に迷いが出始め、から元気で、どこか寂しげで…今も、そんな感じで投げているのが、後ろで自分のターンを待つ度に感じる。 若にゃんとの試合の終盤、俺がここで決めないとっていう流れがきた。散々、ミスったかな?とかって言葉に迷ってたはずの俺は、自分のターンの時に、ゆっくりと1投1投ダーツを投げながら呟いた。 「…単純にさ、好きだからじゃあダメなのかな?ダーツだけじゃなくて、そこにいる時の自分が…そこにいる人達が…ただ好きだからって理由にならないのかな?」 思わず呟いた言葉が、なんともシンプル過ぎて恥ずかしいのと、まるで俺が変に意識してるみたいに聞こえたら恥ずかしいのもあって、オバハンのリアクションの前に、もう一言を急いで付け加えた。 「シンプルに俺と1000回マッチして、ミニオンパークに行くんやろ?それが理由でもエエんやない(笑)?」 1000回マッチしたら、ミニオンパークというご褒美をオバハンと約束しているのを思い出し、思わず付け加え、俺の勝ちで刺さった矢をボードに取りに行く。 振り返ると、ありがとうございましたと試合終了で拳を出しているオバハンは、少しウルウルしながら笑っていた。その拳に俺も拳を合わせるとオバハンは、そうだね…と頷いた。
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