人の変化

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人の変化

人と関わる事で人は変化する…改めて、こんな歳になってから気付いた。知ってたはずなのに、知ってたつもりだった… そういえば、俺以外にも変化のあった男が数名… 「お疲れさま~♪」おっとりとした声が聞こえて入ってきたのは、スーツ姿の身長低めのゆるキャラみたいな見た目の30代前半の男性。 「おぉ、お疲れ!チーズ♪」そのひょこっと現れた客に俺は声をかけた。 彼の呼び名は、チーズ…由来は詳しくは知らないが…携帯ショップで働いている。もちろん、俺もお世話になっている。 彼は昔、俺が行ってたダーツショップにも来ていた長い付き合いだ…古くからのダーツ仲間なはずだけど、そこまで深い関わりもなかった。あの店がなくなって、彼も気付いたら、ダーツを辞めてしまったのだ。 実は1シーズン的な夏風物語の話の時から、たまに店に顔を出す事はあったし、彼自身は来店してくれたりと存在はしていたのだが…携帯の話で来ただけだったり、軽く営業のような感じで顔を出し、チラシのついたポケットティッシュを店に置かせてくれと言うぐらいで、ダーツを投げる訳でもなく、他の客とガッツリからんで話をするという感じでもなく…フワッと来て、フワッと帰ってく人だった。 それが、どうしたのか…仕事の用でもなく、頻繁に来てくれるようになった。もしかすると…彼もオバハンに影響された1人なのかもしれない。 「わーい♪チーズだぁ!!おかえり~」オバハンが元気よくチーズに声をかける。 「おかえりって、だから…ここはお前の家かよ…(笑)」俺は苦笑いしながらツッコミを入れるが、もうオバハンが毎度ただいまと入ってくる事にも慣れてしまったので、ある意味…今、ここはオバハンの家みたいなもんなのかもしれない。 「ただいま♪今日は何を飲んでるの?」チーズは、いつものカウンター席に座るオバハンの隣に座った。 おかえり… ただいま… もしかすると、この言葉で疲れが少しとれるのかもしれない。俺とオバハン、そして誰かがいる…仕事で疲れて、ただ帰るだけの日常で、帰っても静かな空間よりも誰かが待っててくれるという癒しの場所なのかもしれない…今の俺の城は… 「今日はね…またマルが新作を開発中なんだけど、これが微妙なのよ!!未完成のくせに、金とるんだよ!ひどい店主やろ!?」毒づくオバハン…相変わらず遠慮のない口の悪さ…せっかく良い話を思い出して書いていたとこなのに台無しだ。 確かに俺は、どんどん新しい酒のレパートリーを開発中なのだが…何かが足りない…今の時代、この手に握ってるもので検索すればレシピは出てくる。配合は間違ってないが、いまいち…酔っぱらっているとはいえ、オバハンもそう思うようで、微妙…と言いつつ飲んでいた。 「じゃあ、これを使ってみたらどうでしょう?」チーズが手に持っていた袋から何本か酒の瓶を出してきた。 チーズがチラシつきポケットティッシュ以外で店に何かを持ってくるなんて、驚きだった。
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