誰かの居場所

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誰かの居場所

たまには俺の言葉も届くものなんだと思った…いやいや、俺の言葉は心に響くはず!響かないやつの方がおかしい!口下手で、厄介事や重い話は苦手な俺が口を開いたんだから、響いてもらわないと困る!だけど…酔っぱらって号泣されるのは、もっと困る… 「ダーツ自体もね、ここもね、ここにいる自分も、ここに来る人たちもね、マルの言う通り!!好きなの!だけどね、それなのに…私は、いろんなモヤモヤから逃げる為に投げに来てるのかって思ったりしちゃって…逃げずに自分と向き合う為に、ダーツを投げてるはずだと思ってたのに…それが逃げになってきてる事に気付いて…いつもみたいに1人で考えて悩んで迷ってて…だけど、今は話せる場所がある…聞いてもらえる場所がある…って分かって良かった♪シンプルにミニオンパーク行きたい!今は、どれだけ時間がかかっても必ず到達する目標が欲しい!だから、またモヤモヤするかもやけど、投げるよ♪」 そう言いながら、若にゃんは俺の特製カクテルを片手に号泣していた。 真剣にダーツが好きで、この店やこの店に来る人が好きで、ある意味…純粋にダーツと真剣に向き合いながら、自分と向き合いたいのか…そんな人間らしいとこが、羨ましいのか、もう慣れてしまったのか…泣かれるのは困るとはいえ、素直に素で泣ける場所を提供できる事に俺は逆に感謝の気持ちでいっぱいになった… 人の事なんて興味もない…深入りしない…面倒事には巻き込まれたくない…そんな俺も、この喜怒哀楽の激しいオバハンのおかげか?人間らしい人との接し方の楽しみ方を知ったような気がする。 楽しみと言ってしまえば、失礼になるかもしれないが…俺が店を構えて、この城を守っているからこそ、1人じゃなくて良かったと思える他の人間がいるなんて… 俺以外にも、ここを素でいられる自分の居場所だと思ってくれる人がいるなんて…そう思えるようになって、嬉しかった。 誰かの居場所…誰かの目標…笑ったり泣いたり出来る場所…そういう場所を提供できるって幸せだと気付けた。
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